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キッズラインの事件で「ベビーシッターって怖い!」と思ってしまった人へ〜シッターさんを安全に利用するコツ

あってはならない事件が起きた

キッズラインの登録シッターによる性犯罪事件で考えたことを書きます。

事件について知らない方は、まずは以下の詳細記事を読んでください(この事件を最初にメディアでとりあげ、丹念に追求してくれているジャーナリストの中野円佳さんに感謝!)。

クラクラするような内容で、いま、各所からキッズラインへの怒りと疑問の声が沸き上がっています。私もそうです。

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でも正直言えば、私は怒りよりも「残念すぎる…(ガクッ)」という気持ちのほうが強いのです。

なぜかといえば、私はシッター含む外注をずっと積極的に薦めてきた人間だから。東洋経済オンラインの連載「ほしいのはつかれない家族」でも、何度も外注を薦めてきました。

実際、長時間労働が多いのに共働きが増えつつある日本で、家族以外の誰かに家事育児を頼れないのはあまりに負担が大きすぎる。身内や友人に頼れればいいけれど、実際は近くに頼れる人がいないことも多い。日本は欧米に比べて家事育児の外注文化の普及がかなり遅かったのが、やっとここ数年で、家事手伝いやシッターの利用が増えてきたのです。そこに大きく貢献したのがキッズラインでした。

キッズラインの経沢社長は、バリキャリママとしての経歴を売りにして、自身が表に出ることで積極的に会社をPRしてきました。ちなみに、自身のブログでは、キッズラインは「世界一安全・安心を目指す」とまで言い切っていたのです(今思うと、あのシステムでよくここまで言い切れたな…)。

当初、私はキッズラインの登場を好意的に応援していたので、連載でもキッズラインをとりあげたことがありました。(まだバルセロナに住んでた時期なので、この記事のおまけ情報、日本の新しい育児の動きとして)↓

実際、キッズラインの親の依頼の負担を減らすアプリシステムや、シッターさんが自分で時給を決められるシステムは画期的だと私は感じたのです。キャンペーンなどをTwitterでRTしたことも何度もあります。なぜなら、私自身がシッターを依頼したとき、そのアナログで面倒なやりかたにうんざりした経験があって、そこはぜひ変わってほしいと思っていたからです。

でも、こんなことになってしまった今、子どもにとって危険要素のある会社の宣伝に加担してしまったという責任を感じています。申し訳なくも思うし、見抜けなかった自分が悔しくて悔しくて悔しくて…。

そして何より。

今回の事件で、日本に生まれつつあったベビーシッター文化がまた後退してしまうことを恐れているのです。

実際に、SNSでは「ベビーシッターに頼むのはやっぱり怖い」というような意見もいくつか読みました。

こうなると、キッズラインにもたくさんいるであろう、ちゃんと真面目に仕事していたシッターさんが気の毒すぎます。実際に、事件とキッズラインの対応に戸惑うキッズライン登録シッターさんがこんな声も上げています。

男性のシッターさんのnoteも追加。

病児保育で有名なフローレンスも、自社のきちっとした採用&教育システムについて表明しました。

ちなみに、フローレンスの駒崎さんはこんな事件の検証記事を上げています(すごくわかりやすくまとまった記事です)。

1人の性犯罪者から生み出される被害者数は平均380人

この記事にあるこの数字を見たら、「うわあ、やっぱり他人になんて子どもをまかせられない!!!」と思う人は多いのではないでないでしょうか。

でも前述したように、ちゃんとしたシッターさんもいるし、ちゃんとしたシッター会社もある(ちなみに、私がついシッターさん側にたってしまうのは、私の妹が保育士という理由もあります。保育士の給料は安いし組織で働く問題もあるので、都合のいい時間に効率よく働こうとシッターさんに転身する気持ちもよくわかるのです)。そして、状況的にシッターに頼らざるを得ない人もたくさんいるはず。

そんなわけで、あらためて、個人的な経験や取材から得た「ベビーシッターさんを安全に利用できるコツ」を書きたいと思います。

ちなみに、私はこれまで、日本とバルセロナでシッターさんを利用したことがあり、いちばんシッターさんにお世話になったのはバルセロナ在住時です(日本より学校休み多いし学童もなかったなどの理由で)。会社も個人も試し、日本ではキッズライン含む2社を利用したことがあります。シッティングの形も、マンツーマンのシッターから、友人家庭と合同での複数シッター、シッターさんの子どもといっしょのシッター、友人をシッターとして雇う、などいろいろ試してきました。そのほか、ファミリーサポートも利用経験があります。以下は、自戒も込めてまとめてみたのですが、あくまでいち意見として、参考までに読んでください。

ベビーシッターさんを安全に利用する8つのコツ


①依頼前に、必ずクチコミを調べる。

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シッターさん探しでいちばん安心なのは、友人知人にオススメの会社やシッターさんを紹介してもらうこと。特にそういう情報がない場合、初めての会社に頼むときは、必ず評判を調べること。「会社名 クチコミ」とかでググるとたくさん出てきます。評判があまりに悪すぎる会社は辞めたほうがいいです。(追記。中にはクチコミを操作してしまう会社もあるので、悪評がないからといって安心しすぎない)

②自治体や会社のシッター補助が出る会社だからといって、イコール安全でしっかりした会社だと決めつけない

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これはなぜかというと、問題の起きたキッズラインが東京都や企業のシッター助成を受けていた会社だから。今回の件で、審査の必要性も問われるようになったので、今後変わっていくかもしれませんが、とりあえず現段階では、補助が出るからといっても玉石混淆状態で、質が必ずしも保障されているわけじゃない。それはしっかり認識したほうがいいと思います。


③マッチングプラットフォームは、リスクを減らしたい場合は使わない

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契約社員としてのシッターさんを抱える会社と、ただフリーランスのシッターさんを引き合わせるマッチングの会社では、かかる経費から、マッチングプラットフォームの会社(キッズラインのような)が圧倒的に平均時給が安い。でも、多くの場合は審査や教育にお金をかけてない分の安さなので、そこをわかった上で使ったほうがいい。ただ、マッチングプラットフォームにもよい人はもちろんいるので、玉石混淆だと最初から認識して、この中からいい人を探すぞ!という意識で利用するのが大事。そういうのが面倒という場合は、マッチングプラットフォームは避けたほうがいい。


④シッター初回はお試し回

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初回は、必ず雑談的にいろいろ話して、人となりをみたほうがいい。保育の様子も確認したほうがいいので、家にはいっしょにいて、しょっちゅう様子を見ること。これは、自分の家庭との相性を見るためにも大事。シッターは安全度も大事だけど相性や教育方針などが合うかというのも大事なので。リスクという意味では、ハッキリした理由がないのに「すぐ2人きりになりたがる」シッターさんには要注意。子どもからもあとで感想を聞くこと。様子をよく見ること。事件などを心配する方は、監視カメラの設定もアリ(カメラをまわすときは、いまこういう事件もあったので念のため、とシッターさんに事前に説明すること。もしカメラに過剰に拒否した場合は、怪しいと思ってもいいかも)


⑤自分のカンを信じる

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これ、個人的にはすごく大事だと思っています。なにかおかしいと思ったら、その理由をしっかり言葉にできなかったとしても、そのシッターさんや会社の利用をキッパリやめる。意外と、こういう「理由はよくわからないけどなんかイヤ。違和感ある」みたいカンって当たったりするのです。だから、自分のカンをスルーしない。自分を信じる。

(ちなみに私はキッズラインを一度だけ利用したけど、そのときのシッターさんはいまいちででした。でも、前日依頼の経験薄い安い人だったから、まあ値段どおりだし仕方ないか、というレベルのいまいちさだったのですが。息子は喜んでたし、会社のシステムまでは疑問を持たなかったのですが…。でも結局、それ以来、キッズラインは利用しなかったのでした)


⑥子どもと2人きりにするシッターさんは、本当に信頼できる人だけにする。

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これは、シッターさんを頼む理由によっては難しいのですが…。

私の場合、在宅ワークということもあり、シッターさんを頼むことがあってもほぼほぼ在宅。「何かあったらすぐ声をかけて」と子どもにもシッターさんにも伝えるようにしてました。外出するときなど、子どもと長時間ふたりきりにするシッターさんでいちばんお願いしていたのは、友人からシッターになってもらった人でした。(バルセロナで仕事探してた日本人の元家庭科の先生の友人をくどいて個人的にお願いしてた。子どもの相手はもちろん、料理やお菓子作りをいっしょにやったり、合間に私の洋服のほつれとかも直してもらえてサイコーでした)


⑦感想や評価は率直に

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シッターを利用したあとは、その会社に感想や評価を送れるシステムが多いのです。キッズラインは悪評価を書きにくいシステムだったことも問題だったのですが、できる範囲で、気になる点があったときはその評価を会社に伝えるようにする。いいシッターさんだったときはしっかり好評価を伝え、いまいちなシッターさんだったときは改善希望点を伝える。そういう個人の取り組みが、シッター業界全体の質を上げていくことにつながる気がします。


⑧子どもの性教育をちゃんとする

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これもかなり大事。万が一、運悪くおかしな相手にあたってしまっても、事件になる前に未然に防いだり、またその人を再度依頼してしまう、なんてことを防げる可能性が多少は上がるので。

このときに教えたほうがいい内容としては、

「必要がないのに、他人に身体をしつこく触られたり服を脱がされたりするのはダメなこと。おかしいこと。よくないこと」

「イヤなことはイヤと言うこと。逃げること、叫ぶこと」

「もし何かされたりイヤなかんじがしたら、必ず、親に言うこと。それは悪いことではないということ」

「何か起きても絶対に味方だということ」

うちは息子ですが、このあたりは保育園のときからずっと伝え続けています。(日本はよく子育てには安全って言われますが、実際はそうじゃないことも多いし、男児の性被害もけっこう多いのです)いやーホントに、教えたときの息子の反応みて納得したのですが、教育しないと「他人に意味なく身体を触られることは性犯罪」ってことからわからないもんなんですよ!

最近はわかりやすい性教育の本もたくさん出ていて、たとえば同業友人フクチマミさんの「おうち性教育はじめます」もかなりオススメ。一部、ネットでも読めます。



性教育が進んだオランダでは、性教育でまず最初に教える基本が「NOということ」だそう。つまり、「NOということ」はコツコツ教えることで身に付くものだといういうことです。下の本は参考になります。「NOということ」に特化した絵本もあります。


もちろん、NOということだけじゃ防げないこともあります。ただ、予防として、教えておくのは決して損ではないと思うのです。これはシッターさんを利用するしないに限らず、人生で必要なことだから。

あと、このNOTEの反応で教えてもらったので追記。子どもを教育するには、親が正しく性被害について知っておくことも大事ですが、そのあたりでは、このTwitterが参考になると思います。


とはいえ、あらためて言いたいのは、いいシッターさんはこの世の中にたくさんいて、相性がいい、ちゃんとしたシッターさんにめぐりあえると、ものすごく育児が楽しくなるということです。

シッターさんのいいところは、

「親以外に子どもを愛してくれる人間が増える」
「育児の相談相手ができる」
「自分と違う目線で子どもを見て、その報告をしてくれるので、子どもを多角的に見れるようになる」
「プロから子どもの教育や遊び方を教わることができる」
「自分にないスキルを子どもに教えてもらえる」
「親の自由時間ができる」
「自由時間でゆとりがでて、楽しく育児ができるようになる」
「夫婦でデートしたり、家族としてもゆとりがもてる」

など、本当にたくさんあります。

なので、今回の事件で、ちゃんとしているシッターさんたちの名誉や信頼までが傷つけられないことを祈ってやみません。

(ちなみに、説明イラストを動物で描いたのは、依頼側も子どももシッターさんも性別を決めつけたくなかったからです)

今回の事件があったからこそ…のいいこと

最後に明るいことも書きます。

今回の事件があったことで、シッタープラットフォームの問題点、国の法制度の問題点が次々に指摘されるようになりました。どうすればこの問題が解決されるのか、積極的に意見交換がされています。

最近は政府もこんな形で動き始めました。

前述のフローレンスの社員の前田さんは、他国の仕組みを紹介しています。(これもすごくいい記事!)

今回の事件はとても悲しいし腹立たしいけど、これを経て、日本のシッター制度の安全性は高まるかもしれない。そこに私はすごく期待しています。

だって、繰り返すけど、シッターさんそのものが悪いわけじゃないから。シッターさんというのは、本来、家庭を助けてくれるありがたい存在だから。

そして、キッズラインのシステムも全部が全部ダメだったわけじゃないのです。前述したように、依頼が楽になるシステムとかは画期的で、そういういい部分は残ってほしい。

もひとつおまけで、キッズラインの経沢社長のブログ記事のリンクを張っておきます。

このブログの、

「相談相手を選ぶセンスはあなたに委ねられています」
「恋愛相談をするときは、恋愛がうまく行っている相手に。仕事の相談をするときは、仕事がノッてる相手に。起業の相談をするときは、起業で成功している相手に」

という言葉自体は、本当にそのとおりだと思うのです。

たぶん経沢社長はこれまで、事業を伸ばすコツ、上場のコツ、PRのコツが上手な人たちにたくさん相談してきたのでしょう。いい意味でも悪い意味でも。

でも、この理論で言うと、いま経沢社長が相談すべきなのは「事業のトラブルがあったけどちゃんと会社を改善をして建て直した人」。

でも、社長はそういう人たちに相談できてるのかな…?以前と変わらず、広げることだけ上手な人たちに相談してるんじゃないのかな…?とおせっかいな心配をしてしまっています。

キッズラインにはいい部分もあるのだから、きちんと責任とって、システムをいろいろ作り替えて、再スタートを切ってほしいとも私は思うのです。経沢社長がPRのときに繰り返し発信してきたあの熱く真摯な言葉たちが、過大広告ではなく、心からの発言だったことを祈ってやみません。でも、もし逆に、こんなトラブルで責められるなんて面倒!くらいのことを考えているのなら、育児業界からは撤退してほしいのです。

というわけで、長くなりましたが、キッズラインの事件から考えたことでした。日本のシッター文化が、いい方向に進むことを祈ります。


(追記01)この件については、法改正やデータベースシステムなどの構築が不可欠だと思っています。とはいえ、自身で運動を起こすにはこの分野に知識がなさすぎるので、もしそういう方で、運動などにイラストマンガが必要であれば、できる範囲で無償で描きたいと思っています。ご相談ください。

(追記02)東京都にはこちらのメールフォームから意見も送れるそうなので、私は送ってみたよ。

私が送ったのは、(1)ベビーシッター助成はコロナ後も非課税でお願いしたいということ(災害時とか特例をのぞき、助成は課税対象になってしまうようなので)、(2)都のベビーシッター助成を受けれる会社は、シッターの審査や教育にある程度の基準を儲けて、それをクリアした会社のみにすること。(2)性犯罪者が保育関係の仕事につけないようにする仕組みを構築してほしいということです。こういうメールフォームって意外と効果あるので、よかったらぜひに。

(追記03)ベビーシッターさんたちが無犯罪証明書を発行する署名運動を始めたそうです。私も署名しました。


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