コミックジャーナリズム研究(2)マンガにまつわる呼称を整理してみた
大学院でコミックジャーナリズム研究を始めたばかりの私、
もともとマンガはいろんな呼び方あるよな〜と思っていたのですが、さらに調べていくと、あるわあるわ!
研究を進めるうえで基本用語の整理をしておかないと混乱しそうなので、今回は「マンガにまつわる呼称」をまとめてみました。
とはいえ、マンガの区分けは諸説あるものが多いのです。今後、追加修正することもあるかもしれません。とりあえず現段階でわかっているものを羅列して、最後に図表も紹介します。ジャーナリズムに関係すると思われる呼称には⭐️をつけました。ではいきまーす!
国ごとのマンガの呼称
【⭐️漫画・まんが・マンガ・manga】
日本ではマンガの総称。欧米では「manga」は日本のマンガを指す呼称。日本のマンガは世界3大マンガ産業のひとつ。一枚絵から複数コマのマンガまでその範囲は広い。英語の「manga」のwikipediaはこちら。
【⭐️コミック・comic,comics】
英語での「マンガ」。アメリカではヒーローもののアメリカンコミックスを指すことが多いが、他の国では国ごとに違う意味で使われている。原則的には複数のコマから構成されるマンガのこと。アメリカン・コミックス(アメコミ)は世界3大マンガ産業のひとつ。
【⭐️バンド デシネ・bande dessinée】
フランス語圏のマンガ。略称はB.D.(ベデ)。原則的には複数のコマから構成されるマンガのこと。世界3大マンガ産業のひとつで、フランス語圏では「9番目の芸術」(le neuvième art)として認識されている。
【⭐️漫画・マンファー・manhua】
中国語のマンガ。大正時代に日本から「漫画」という言葉が伝わった。
【⭐️連環画・れんかんが】
20世紀の中国・香港で人気を博した漫画形式。1ページ1枚絵で小冊子で販売された。
【⭐️만화・マンファ・manhwa】
韓国語のマンガ。オンラインで縦スクロールで読むウェブトゥーン(webtoon)は韓国発祥。
【⭐️テベオ・tebeo,tebeos/イストリエタ・historieta/ビニェータ・viñeta】
スペイン語圏のマンガ。この3つの違いは諸説あり、まだ調査中。
【⭐️フメット・fumetto,fumetti】
イタリアのマンガ。イタリア語で「煙、湯気」を表すfumo(フーモ)に由来する言葉で、漫画のフキダシの形からこの呼び名が生まれた。
【⭐️グラフィックノベル・graphic novel】
主に大人の読者を対象とした、複数のコマから成るマンガの総称。ヒーローものマンガと区別するため生まれた言葉(アメコミ=子どもっぽい、グラフィックノベルなら大人向きだからまだOKみたいなイメージがアメリカにはある)。アメリカで生まれた言葉だが、今は世界中で使われている。フランス語圏のバンド・デシネもここに含まれる。その定義はあいまいで、日本では「海外のマンガ」の意味で使われるときもある。
【⭐️コミックストリップ・comic strip】
複数のコマで構成されるマンガ。「コミック」より一本の話が短くて、新聞に掲載されることが多い。ギャグから社会的なものまで内容は幅広い。
【シーケンシャル アート・sequential art】
連続的な画像でメッセージや情報を伝える表現方法の名前で、その代表的なものがマンガ。アメリカ人漫画家ウィル・アイズナー(アメリカで最も権威ある漫画賞アイズなー賞は彼の名に由来する)が提唱した。
てなわけで、ここまでは、主にコマが複数のマンガの呼称でした。次は一枚絵のマンガに関係するものです。
一枚絵やひとコママンガの呼称
どの国でも、マンガの歴史はたいていは一枚絵から始まります。なので、歴史も長く、呼称もたくさんあります。どどーっといきますよ!
【⭐️風刺画・風刺漫画】
社会や政治を嘲笑・批判する絵やマンガの総称。文字が入っているものと入っていないものがある。その歴史は古く、新聞に掲載されることも多い。風刺専門雑誌も世界中にある。ピューリッツァー賞を受賞した作品も多数。
【戯画(ぎが)・狂画(きょうが)・戯れ絵(ざれえ)】
おかしみのある絵、滑稽な絵、戯れに描かれた絵。風刺画・風刺漫画・鳥羽絵を指すこともある。
【⭐️浮世絵】
主に江戸時代にさかんだった芸術作品。現代風俗(浮世のこと)を描くもの。肉筆画も含むが、多色刷り版画を指すことが多い。
【鳥羽絵(とばえ)】
江戸時代から明治にかけて描かれた戯画のひとつであり、浮世絵に含まれる。「江戸のマンガ」といわれる。
【大津絵(おおつえ)】
江戸初期から今も続く滋賀県大津の民族絵画。戯画のひとつ。題材は幅広く、風刺的な作品も含む。現在も西洋での人気が高く、かつてピカソやシーボルトも所有したといわれている。
【⭐️ポンチ絵】
風刺画のひとつで、明治時代に流行した一枚絵マンガ。主に新聞や時事雑誌に掲載された。イギリスの風刺雑誌『パンチ(punch)』を模した居留地外国人向けの風刺雑誌「ジャパン・パンチ」がイギリス人漫画記者チャールズ・ワーグマンによって創刊され、その「パンチ」から生まれた言葉。現代の「漫画」の意味で使われた時代もあったが、しだいに古臭い単純なマンガや、簡単なスケッチを指すようになった。
【⭐️カリカチュア・英仏caricature・伊caricatura・独karikatur・西caricatura】
人物の性格や特徴を際立たせるため誇張・歪曲・簡略化した人物画(似顔絵)。風刺画の技法。戯画、風刺画そのものを指すこともある。
【⭐️カートゥーン: cartoon】
欧米の一枚絵マンガ(主に風刺画)を指すこともあれば、子ども向けのアニメを指すこともあり(世界展開しているアニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」もある)、かなり意味が広い。
↑読売新聞が発行する英字新聞「THE JAPAN NEWS」のオンライン版の政治カートゥーンページ。
そのほかのジャーナリズムに関係するイラスト・マンガの呼称
最後に、これまでの呼称と内容はかぶるものがあるものの、ジャーナリズムに関係する媒体やジャンルの名前についてです。
【⭐️瓦版(かわらばん)】
江戸時代の日本で発行されていた時事性・速報性の高い一枚刷り印刷物。当時は「読売」と呼ばれていたが、明治以降にこの呼称が一般的になった。
【⭐️錦絵新聞】
明治初期に、ニュース🟰新聞を多色刷り版画である錦絵を用いて視覚化した一枚刷りの出版物。新聞記事を元に作られたものもあれば、独自に取材して作られたものもあり、中には真偽の怪しいニュースもあった。
【⭐️コミックジャーナリズム・graphic journalism】
社会問題や政治や時事問題を複数のコマによるマンガで描いたもの。グラフィックノベルやバンドデシネの社会派作品の一部もここに入る。
【⭐️グラフィックジャーナリズム・graphic journalism】
コミックジャーナリズムと同義。「ニューヨークタイムズ」ではグラフィックジャーナリズムという言葉が使われている。
↑「ニューヨークタイムズ」のWEBマンガシリーズ、シリア難民をテーマにした「ようこそ新世界へ」。ピューリッツァー賞を受賞し、書籍化もされた。
↑同じく「ニューヨークタイムズ」のWEBマンガシリーズ、刑務所をテーマにした「Inside death row」。WEBでのマンガの見せ方が面白い。
そのほか、イラスト・マンガの呼称にジャーナリズム要素をくっつけた【カートゥーン ジャーナリズム・cartoon journalism】【カートゥーン レポーティング・cartoon reporting】【コミックス レポルタージュ・comics reportage】【シーケンス レポルタージュ・sequential reportage】などの言葉もネットにはあるのですが、英語圏で多く使われているのは「コミックジャーナリズム」「グラフィックジャーナリズム」のようでした。
【⭐️機能マンガ】
ニュートラルに情報を整理・伝達するかを重視したマンガ。「社会問題を伝える」「研究内容を紹介する」「医療の方法を説明する」「誤解のある社会認識を修正する」などの内容を、偏った表現や大仰な表現を避け、純粋に「明確かつ公平に伝える」ことを目指すため、描き手にはバランス感覚が要求される。京都精華大学マンガ学部竹宮恵子命名。
ジャーナリズムのイラスト&マンガ図解
さて最後に、ジャーナリズムメディアにおけるイラストマンガの役割や、ジャーナリズムに関するイラスト&マンガの区分けの図も、頭の整理のために作ったので載せておきます。その表に関しては、バルメンバーさん&この記事の購入者のみの公開です。図表に興味ある方、もしくは研究活動を応援したい!という方はぜひ購入するかバルに入店してみてくださいね。
長い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました😊
ここから先は
よろしければサポートをお願いします!サポートは勉強費・研究費としてありがたく使わせていただきます。