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「視聴者参加型クイズ番組」の終焉は「俳優司会のクイズ番組」の終焉でもあるという話

前回、このnoteを書いたところ内輪から地味に熱い反応をいただきました。狭い分野かもしれないけど大きな事件なのですよ。

そしてこれに関しては実は付け加えたいことがあって、それはタイトルにも掲げたとおり今回の「視聴者参加型クイズ番組の終焉」は「俳優司会のクイズ番組の終焉」でもあるということです。これも日本テレビ史において(誰も注目しないかもしれないのだけど)大きな大きなターニングポイントになるでしょう。

実は視聴者参加型のクイズ番組には大きく2つの系統があります。ひとつは、
「アメリカ横断ウルトラクイズ」
「アップダウンクイズ」
「世界一周双六ゲーム」
「ベルトクイズQ&Q」

などの群。そしてもう一つは、
「クイズグランプリ」
「クイズ・タイムショック」
「100万円クイズハンター」
「パネルクイズ・アタック25」

などの群です。それぞれ何か分かりますか? 

答えは前者が「アナウンサーが司会をするクイズ番組」、後者が「俳優が司会をするクイズ番組」です。80年代において視聴者イジりで天才的な手腕を発揮した桂三枝や「クイズ Mr.ロンリー」など多くのクイズ番組を司会した桂文珍のように芸人が担うというケースもありますが、いずれにしても特に70~80年代の視聴者参加型クイズ番組にはこの俳優司会の視聴者参加クイズ番組というのがたくさんありました。

一見畑違いとも思える俳優を司会に起用したクイズ番組には名番組が多く、知的な司会で36年もの長期に亘ってお茶の間を楽しませた児玉清さんの「パネルクイズ・アタック25」、東宝の特撮映画によく出てくる小泉博さん司会の「クイズグランプリ」。ドラマでダンディながらスケベな役をやらせれば天下一品だった山城新伍さんを起用した「クイズ天国と地獄」「アイ・アイゲーム」などなど。あと忘れられがちですが「クイズ100人に聞きました」の関口宏さん、「人生ゲーム ハイ&ロー」などの愛川欽也さん、「クイズ・ドレミファドン」の高島政夫さんなどは司会者としてのキャリアが長いですが大元は俳優です。まさに名クイズ番組に俳優出身の司会者あり。これが、日本クイズ番組史を振り返る上で興味深いポイントなのです。

話術が長けていたから起用されたというケースもあったでしょうが、「クイズ・タイムショック」の田宮二郎さんのように、番組のスリリングな雰囲気を活かすために、ドラマ「白い巨塔」などで人気を博したクールな二枚目俳優をあてるという演出面での重要性が起用のキッカケというのはあったでしょう。一分間で12問、1問につき5秒しかなく、挑戦者も見ている者もハラハラし通しの番組に、田宮氏のもつ雰囲気がマッチしていたことは言うまでもありません。田宮氏が当時世間を震撼させた猟銃自殺で世を去ったあと受け継いだ山口崇氏も同じく俳優で、このコンビで合わせて17年の長寿番組となりました。その後3年をおいて復活した番組で三代目司会を務めた生島ヒロシ氏(元TBSアナウンサー)司会版は成功と言いがたく、2000年に再び番組が復活した際には進行内容とは関係ないのに演出の一環として俳優の鹿賀丈史氏が起用されていたのは象徴的な流れと言えるかもしれません。

中には歌舞伎俳優の片岡仁左衛門さん(当時は片岡孝夫)が司会を務めた「逆転クイズジャック」とか名司会だった小池清アナウンサーのあとを引き継いで西郷輝彦さんが司会を務めた「新アップダウンクイズ」など、あまり上手くいかなかった例もありますが、「俳優を司会にあててみることでクイズ番組を化けさせる」という試みはテレビ業界では長らく行われていたのです。

ただ、俳優が司会として機能するのは一般人が相手だからで、今日ではスタンダードな芸能人が解答者を務めるクイズ番組では、それら解答者の陰になってしまうこともあるのか起用されません。思い出していただけるといいかと思うのですが、昨今のテレビのクイズ番組はほとんど芸人さんが司会ではないかと思います。

つまり視聴者参加型のクイズ番組がなくなってしまうということは、俳優さんが司会を務めるクイズ番組が見られなくなってしまうということで、この2021年9月に幕を閉じる「パネルクイズ・アタック25」の谷原章介さん、「超逆境クイズ 99人の壁」(特番スタイルで継続すると発表されています)の佐藤二朗さんという司会のお二人がともに俳優であることからも、その意味が分かっていただけるかと思います。

さて、実は私はアタック25の最後の一般予選会(2021年7月4日)に行ってきました、あわよくば最後に出場できないかなと思っておりましたが、無事に筆記予選を通り面接を受けてきましてそれなりによいアピールが出来たと思うのですが(通常はこのあと予選通過のハガキが来て合否を知ることになるが、今回はもうあとがないため出場決定であれば電話が来るとのことだった)、その後に緊急事態宣言が出たこともあり呼ばれるような座組の回はそもそもつくられないものと思います。過去の優勝経験者だけを対象にした「史上最強のチャンピオン決定戦」が最終回に予定されており、実は優勝経験があるのでその予選も受けることは出来たのですが、私としてはあくまでも通常回に出たかったのでこちらの応募は見送りました。私自身30年近く視聴者クイズ番組を参加者として楽しんできましたが、その歴史もこれで終わり。以後は視聴者として残りの期間を応援していきたいと思っています。

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