絵画の楽しみ方

私は絵画が大好きで、画集も山の様に所有しているのですが、美術館で実際に作品の前に立って観るのは格別なものがあります。

描かれたモチーフや、筆捌き、色使い、額のデザイン、展示されている空間も含めて体感する喜びは、画集では決して味わえない至福の時です。

しかし、それらとは別に、作品の前に立つといつも私の心を揺さぶるものがあり、それが何なのかずっと考えてきました。

海外の美術館の場合、遥々時間をかけてその作品の前に辿り着いたという感慨もあるのですが、どうもそれだけでは無さそうです。

私は海外の美術館に行く時は、必ずスケッチブックとコンテを片手に、気になった絵画の前でクロッキー的な模写をする事を趣味としているのですが、何度も続けていくうちにその正体に気付くことができました。

それは自分が立っているその場所に、その画家も立って(あるいは座って)描いていたという事実です。

画家が何ヶ月もかけて、画面に向かって描いていた同じ場所に自分も立つ事で、画家の気配を感じる事ができ、それが私の心を昂らせるのだろうと思います。勿論、絵画だけではなく彫刻をはじめ、あらゆる作品にも言える事です。

画家達は、絵を描くだけではなく、その絵の前で構想を練ったり、独り言を呟き、軽食をとったり、鼻をかみ、恋人と愛を語り合ったり、パトロンと口論もした事でしょう。

そんな、ありとあらゆる出来事を目撃していたのは描かれた絵画であり、その前の空間である事を意識すると、絵画を観ることが更に楽しくなり、一日も早く美術館へ行きたいと思ってしまうのでした。

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