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On the Townへの道 8

10代後半でジャズに出会い、そこから私はアドリブを中心とした音楽を自分の道と決め努力を重ねた。しかし今思えば漸くジャズや音楽といったものについて深く考える様になってきたのは30代半ば頃からだったと思う。それまでの私は、自分のレベルアップのために憧れの先人たちの跡を追い、テクニックを磨き、方法論を学び実践し、出来るだけ早く高度で余裕のあるアドリブプレイヤーになることをひたすら目指していた。わかりやすい目標である。わかりやすいので同じ次元にいる他者とも比べやすい。またアドリブはその瞬間に作曲をして表現することなので、自然に作曲もする様になる。自分で曲を書き、実際にバンドで演奏し、リーダーアルバムも数枚リリースした。インプットとアウトプットに明け暮れる毎日であった。

30歳を少し過ぎた頃、佐渡裕さんと出会い、私はそれまであまり縁の無かったクラシック音楽に挑戦することになった。トランペットコンチェルトを必死でさらい、初めて佐渡さんの前で演奏した日のことは忘れない…「音楽を奏でる喜びに満ちていない」と言われてしまったのだ。全く違う方向からの自分の音楽についての指摘。最初は全く意味が分からなかった。ただ否定されたことだけがショックだったのを覚えている。その後、ボロボロになりながらもコンチェルトはなんとかやり遂げたが、そのあたりから「音楽を奏でる喜び」についてのモヤモヤを解決すべく暗中模索の時代が始まり、同時に音楽・ジャズ・芸術・人生についての本当の意味での勉強が始まった。

それから、私は人生においても音楽においても様々な経験をし、その中で研究や制作を重ねていった。時が経ち、40代半ばになってやっと「それは全て自分の内側にある」という考えにたどり着いた。

そして50代になった今、私は…音楽を、個々のクリエイティブな創作によって生まれた「うた」同士が結びつき、協働作業によって展開していくアートだと思うようになった。

"On the Town"で、自分の内側で生み出した「うた」が空間に豊かに響いていく。。。そのイメージを大切に持ちながら広がっていきたい。

佐渡さんの指揮棒と素敵なダンスを踊るために。


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