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On the Townへの道 5

いわゆるジャンルというものがある。私はジャズミュージシャンなのでジャンルはジャズだ。

On the Townにはジャズの要素が多く含まれている。楽譜はそれをクラシックやミュージカルの演奏者がジャズのニュアンスで演奏するための書き方がしてある。。。と思う。これが私にとってはかなり難しい。クラシックの読譜力で読み取って初めてそのニュアンスに到達するからである。

私は普段、音楽を聴き、感じ、制作する、という時は自然とジャズの感覚になっている。しかしトランペットの練習をする時はクラシックの教則本を使う。そこに私の必要なものがたくさん詰まっているからである。音楽について考え、制作する時間と練習する時間を比べると、練習の時間の方が圧倒的に多い。しかしながら私の頭の中はどうなのかというと、完全にジャズの感覚で音楽を捉え、生み出している。逆に言うと、クラシックの感覚というものが殆ど想像できない。どういうことか。それは単純明快で、自分が好きな音楽・・・いつも聞いている音楽は基本的にジャズまたはジャズ系のものだということだ。もちろんクラシックやポップなものも聴くことが時々あるがジャズに比べるととても少ない。だから今回超えなくてはいけないハードルのひとつが「クラシックの方法で書かれた譜面を細心の注意で読み、理解し、表現する」ということなのである。

楽譜から本質的なニュアンスを読み取り、表現するための研究は大変だがとても楽しい。その中で、ジャズではあまり味わったことのない感覚に出会ったりするだろう。自分の知らない角度からジャズを見ることができるようになるかもしれない。実に有意義な体験だ。しかし、曲を知りさらに自分自身の音楽を生み出すというその先の作業はその楽曲が完全に自分の中に染み込んでいないと出来ないことだ。そうでないと、ただ譜面を左から右に読んでいるだけの「音読」と同じになってしまうからだ。「音読」が上手に出来ていたとしても、自分の感情や内側の奥底から流れ出てくる「魂の歌」などは到底浮き上がってなどこないと思う。まだまだ遠い道のりだ。まずはOn the Townを徹底的に知ることから始まり、そこから自分の中で深めていく事が大切なことだ。

ジャンルの様なものは時間とともに激しく変化するものである。このジャンルという考え方は数多くの音楽家や音楽作品を整理したり関連付けたりするのには大変便利だが、音楽家自身がそれに縛られたらoutだと思う。自由に広がっていくことが難しくなるから。だがあえてこの便利な考えを使って言うと、、、私は今、自分の知っている世界から外に出て、さらに深化するということを経験している。

On the Townへの取り組みが私の感覚に新しい風を吹き込んでくれている。最近Apple Musicの私のライブラリーでクラシックのアルバムも目立つ様になってきた。

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