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トロンボーン練習日記 2

 トランペットを吹いて40年以上が経った。
姿勢、アンブシュア、舌の動き、ブレス、音程、音のイメージ、音の質感、リラックス、その他様々な方法や考え方を通り、試行錯誤を繰り返し現在に至る。

 楽器は、全てがリンクすることで安定した音を得ることができる。
何かひとつのことに拘ると悪循環が生まれ、結局「良い音が出ない」「レンジが広がらない」等たくさんの悩みの種を生み出す。
 大切なことはひとつではなく沢山あって、それぞれが難しく、その沢山の複雑なことを「力を入れずに」まとめ、操り、「良い音」「良い音楽」へと繋げ、広げていく。
 長い時間の中での何度も訪れる「気付き」がそれらを分らせてくれた。

 トロンボーンの練習を毎日数時間ずつ続けて2ヶ月が経った。 
トランペットで行った様な「試行錯誤」の超短縮バージョンが絶えず頭を駆け巡る。
なかなか安定感を得られない。焦ることが成長を遅らせるということを分かっているので気楽に、気長に沢山吹く。でもやはり出来ないことへの不満が募る。

 そんな消化不良の日々の中、ふとした瞬間に先月体験したトランペットのスランプを思い出した。
 それは、トロンボーン のマウスピースを吹くことで唇や口の周りの筋肉のストレッチをした様な状態になり、その後トロンボーンよりもかなり小さいマウスピースであるトランペットを吹くと音色が柔らかくしかも力強くなった様に感じられ、それなら「トランペットのアンブシュアをトロンボーン のアンブシュアに近づけてしまう」という安易な発想が生まれ、よく考えずに実行した、ということから起きてしまったという経験だ。(個人的な考察によるものなので本当のところは分からない。)
 トランペットのスランプには慣れていたので、冷静に各ポイントをチェックし、結局、原因と考えられた「アンブシュアの変更」を見直し、あらためて整え、克服した。
 アンブシュアの変更と言っても外側から見ると多分「全く変わった様には見えない」と思う。変えたのは唇の横の筋肉の力を入れる方向と上下の力の比率、口角の角度を感覚的に下げる・・・などという自分にしか分らない内容だ。
実に僅かなことが全体に大きな影響を及ぼす、ということで、この僅かなことの「修正」で無事復活することができた。
 そしてこの経験がトロンボーン の奏法を安定させることへの大きなヒントになった。

 人間の顔は感情やコンディションによって激しく変化する。
 喜んだり怒ったり悲しんだり楽しく笑ったり、顔を見ただけでその人の様子が伺えるということもある。大抵の人の場合、それをコントロールすることができない。
 金管楽器のリード(振動するもの)にあたるのものは唇なので、このリードは顔の表情の変化に左右されやすいリード、ということになる。
トランペットで行っている、そのことを大切にしたアンブシュアについての考え方をいま一度振り返り、より深く考え、安定を維持しながら(感情を揺さぶられる)音楽を演奏する様に心がけてみた。
その結果、ある程度の安定は得ることが出来た。

 初心忘るべからず。


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