[咲様] 2. 部室

【1年生1月/No.10side】

あの日咲様の召使いとなって以降、私たちはお互いを召使いネームで呼び合い、咲様のことは「咲様」と呼ぶようになった。
それまではお互いの日常生活や好きなアニメ、観たドラマの話などもしていたが、そういった話はほとんどしなくなった。
各曜日で咲様にどんな奉仕をしたかの自慢、そして咲様が喜んでくれたこと、咲様が嫌がったことなどを共有して、よりよい召使いになれるよう4人で話し合うようになった。
私たちの話題は常に咲様と関係することだけになった。

部活は最低5人の部員が必要だったため咲様のお名前を借りた。
「マナー研究部」という名前で申請しようとしたが、なかなか顧問の先生が見つからず難渋した。
最終的に、まだどの部活動の顧問でもなかった数学科新任の芦野先生がなんとか引き受けてくれることとなり、1年生の1月にやっと部活として認められた。

とはいえ5人しかいない小さな部活なので、与えられた部室は、文化部部室棟の1番奥にある6畳ほどの小さな和室の空き部屋だった。
小棚が1つとローテーブル1つ、薄い座布団が2枚しかなかった。

咲様に部活が認められたこと、そして咲様のお部屋となる部室がもらえたことを報告すると、その日早速部活に参加してくれることとなった。
放課後、私を含めた部員3人は部室で壁際に並んで立ち、咲様を待った。
少しして咲様と咲様の通学バックを持った水曜日担当の「びーこ」が来た。
びーこは私たちの列に加わり、咲様は上履きを履いたまま部屋にあがって奥まで進んだ。

「きこ、椅子。」
「はい!咲様!」

木曜日担当の「きこ」が咲様の後ろにまわり込んで四つん這いとなった。しかし咲様はそこには座らず、直立する私たちの方を見た。

「はあ、気が利かないなあ。これじゃ硬くない?」
「はい!咲様!失礼しました!」 

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