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思い出がなければ人生は何も残らない vs 思い出だけでは人は生きていけない

ドラマや映画をみていて、はっとすることばが出てくる瞬間がある。それまでなんとなく見ていた映画が、自分にとって意味のある物語に変わる瞬間。

前回は "THE HEAD" をみていて「信じられないくらい素晴らしい人よ」ということばに出会いました。

今回は、昨日、とあるドラマをみていてそんな瞬間がきた。

ー思い出がなかったら人生は何も残らない。

この言葉を聞いた時に浮かんだのは、かの有名な(たぶん)あのことば。

ー思い出だけでは人は生きていけない。

対局にあるような、でもなんとなく似ているような、そんな二つのことば。後者の方が歌の歌詞なんかでよく耳にすることばな気がしますね。

さて、なぜこのことばがはっとしたのか。考えてみます。ゆるゆると。

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(ちなみにこれは、今大人気 "梨泰院クラス" での、お母さんと娘の会話中のことばでした)


目の前の現実と向き合う強さ

なんとなく私は、「思い出だけでは人は生きていけない」ということばが持つ力というのは、現実を突きつける、そんな雰囲気を感じました。

思い出「だけ」では人は生きていけない。確かにその通りでしょう。そしてこのことばは、何らかの事情によってがんじがらめになって動けない人や、前に進むことができない人を鼓舞するような時に使われるイメージです。

「思い出だけでは人は生きていけない、だから過去は振り返らず現実をみなさい。」
「思い出だけでは人は生きていけない、だから地に足をつけて前に進みなさい。」

使い方の例は、こんな感じですかね。なんとなく、当人のためを思って厳しく諭すような。

灯りを灯すようなあたたかさ

一方、昨日聞いた「思い出がなければ人生は何も残らない」が持つ雰囲気とは。

なんとなくこちらは、同じく何らかの事情によってがんじがらめになって動けない人や前に進むことができない人、先行きがみえなくなって道に迷ってしまったような人に、「ちょっとの希望を灯す」ようなイメージが浮かびました。

「思い出がなければ人生は何も残らない。だから今は思い切り悩んでいい。」
「思い出がなければ人生は何も残らない。その思い出を抱えながら前に進もう。」

使い方の例は(あまりこのことばを使ったことがない気がしますが)なんとなく、こんな感じ...ですね。なんか、こっちの方が元気でませんか?

ーがんばった思い出。たのしかった思い出。かなしい思い出。つらい思い出。くだらない思い出。せつない思い出。あまずっぱい思い出。

思い出だけでは人は生きていけないってその通りな気がしながらも、今の自分が作られたもののひとつって思い出だと思うんです。

それをすべて忘れてしまったとしたら、いまの自分は自分なくなる気がする。少なくとも私は。

これからの自分とか誰かとかに

後悔したり、悔やんだり、だれだってそんな瞬間はあるだろうけど、なんとなーく「思い出だけでは人は生きていけない」ということばには思い出を否定するような雰囲気があって、「思い出がないと人生は何も残らない」ということばには、酸いも甘いもすべての思い出を肯定するような雰囲気を感じました。だから引っ掛かったのかな。いい意味で。

人は思い出「だけ」で生きていけない。それは一つの正解だし、なんらかの思い出にしがみついてそこから動けずにいるというのは、とてもしんどい状況だと思います。

だけど、そんな時に「君が抱えているのは大事な思い出なんだろうけど、思い出だけでは生きていけないから前に進もう」って言われたところで、「は?なに言ってんの?わかってるし!わかってるけどここから動けないんだよ。ほっとけばーか」ってなるかもしれません。

けど、「思い出がなければ人生には何も残らないよね。その大事な思い出を抱えて前に進もう」って言われたら「ありがとう。そうだね。前に...進む...よ」ってなる気がしません?しませんかね。

思い出があるから人生には「何か」が残っていて、「何か」が生まれて、「何か」がかたち作られていくのだと。そんな気がします。

だから自分とか、自分以外のだれか大事な人が「思い出」に囚われてがんじがらめになっている時があったら、「思い出だけでは人は生きていけない」ではなく、「思い出がなければ人生には何も残らない。何か残した私(or君)は素晴らしいぜ」って思う(あるいは声をかける)ようにしよう、と思ったというお話。

以上です。



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