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コミュニティ文化の発展と維持に関するオートエスノグラフィー:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回はコミュニティ文化の発展と維持に関するオートエスノグラフィーの論文です。

オートエスノグラフィー(Autoethnography)

  • 研究者が自身の個人的な経験をデータとして用い、それを文化的・社会的文脈で分析する定性的研究手法

  • エスノグラフィーが主に研究者が外部から観察者として他者の文化を研究するのに対し、オートエスノグラフィーでは、研究者自身が内部から自分の体験を通じて文化を探求し、自己の経験を社会的・文化的構造と関連付けて分析する

  • オートエスノグラフィーは、特に感情的な内容や、アイデンティティ、権力、マイノリティ、ジェンダーなどのテーマを探求する際に有用とされている

参考論文:
・Ellis, C., Adams, T. E., & Bochner, A. P. (2011).
・Adams, T. E., Ellis, C., & Jones, S. H. (2015).
・Chang, H. (2008). Autoethnography as Method. Routledge.

今日の論文

Team Culture of Community: Cultural Practices for Scientific Team Cohesion and Productivity
コミュニティのチーム文化: 科学的チームの結束と生産性のための文化的実践
Small Group Research, 2022
Brian A. Burt, Blayne Stone Jr., Taylor Perkins, Alexandra Polk, Carolina Ramirez, Joey Rosado

サマリ

  • 科学的なチームにおける「コミュニティの文化」は、メンバーの学びと参加、チームの機能、結束、そして生産性に影響を与える

  • 本研究では、4年間にわたって12のフォーカスグループインタビューを通じて、1つの研究チームがどのようにしてこのようなコミュニティ文化を発展させ、維持したかをオートエスノグラフィー的アプローチで検討した

  • 6つの相互に関連する文化的実践が、このコミュニティ文化を促進するための鍵となることが明らかになった

方法

  • 2015年から2019年にかけて、23人のメンバーを対象に12回のフォーカスグループインタビューを実施

  • オートエスノグラフィー的手法を用いて、チームの結束や生産性に寄与する文化的実践を特定

わかったこと:
チームのコミュニティ文化モデル(TCCM)

チームのコミュニティ文化モデル(TCCM: Team Culture of Community Model)は、科学的チームにおける結束と生産性に影響を与える要素を示す理論モデル。このモデルは、チームが持つ文化的実践が、どのようにチームの構築や学習行動、参加に関与し、最終的に結束や生産性を高めるかを説明するもの。

チームのコミュニティ文化モデル(TCCM)
  • 制度的背景と研究の期待
    モデルの最も外側に位置する要素であり、チームの運営に影響を与える外部要因。たとえば、大学の評価システムや研究助成金の取得目標など、制度的な枠組みや研究の期待がチームに対してプレッシャーを与え、その活動に影響を与える。

  • チームの設計、学習行動、参加
    チームがどのように構築され、機能するかを示す3つの主要な要素

    • チームの設計: チームのメンバー構成や役割分担、リーダーシップのスタイル。チームがどのように編成されるかが、結束と生産性に大きな影響を与える。

    • 学習行動: チームメンバーがどのように知識を共有し、互いに学び合うかを示している。知識やスキルの伝達が行われる方法が、チームのパフォーマンスに貢献する。

    • 参加: メンバーがチーム活動にどれだけ積極的に参加しているかを指す。積極的な参加は結束を強化し、チームの目標達成を支える。

  • 文化的実践(Cultural Practices: CP)
    モデルの中心に位置するのが、6つの文化的実践。これらの実践がチーム内で行われることにより、コミュニティ文化が形成され、結束と生産性が向上する。

    • 多様なアイデンティティと視点の意図的な包含: チームメンバーの異なるバックグラウンドや視点を積極的に取り入れること。

    • メンバー同士が学び合い、教え合う場を作る: 知識や経験を共有し、相互学習を促進する。

    • アイデアを挑戦し合うことの常態化: 個人攻撃ではなく、建設的な批判を行う文化を醸成する。

    • メンバー間のメンタリング: メンバー同士が互いに知識やスキルを伝え合い、次世代に継承していく。

    • メンバーの信頼とつながりを築く: 研究外の交流や信頼関係を強化し、チーム内の人間関係を深める。

    • 共通の目的と価値観を確立する: チーム全体が共有する目標や価値観を定め、それによってメンバー間の一体感を生む。

  • 双方向の関係
    モデルでは、チームの設計、学習行動、参加が結束と生産性に影響を与えるだけでなく、結束と生産性もチームの文化的実践や設計に影響を与えるという双方向の関係が強調されている。これは、チームが時間とともに進化し、文化や実践が変化し、その結果がフィードバックされるプロセスを表している。

論文から得た学びと活用場面

特に多様なメンバーが互いに学び合い、挑戦し合うことで、チーム全体の知識と能力が向上することがわかりました。また、メンタリングや信頼の構築が、チームの持続可能な成長に貢献することが示されました。
とくにCPはチームの結束や生産性を向上させるための指針として活用できそうです。特に、メンタリングや多様性の受容が鍵となりそうですね!

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