対話的フィードバックと学生の学習:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、対話的フィードバックと学生の学習に関する論文です。
対話的フィードバックについては下記もご笑覧ください~
今日の論文
Dialogic Feedback and Potentialities for Student Learning
対話的フィードバックと学生の学習のポテンシャル
Learning, Culture and Social Interaction, 2017
Anna Steen-Utheim, Anne Line Wittek
サマリ
対話的アプローチは、高等教育におけるフィードバックの再概念化において重要視されている
本研究は、対話理論に基づく4つの対話的次元を特定し、教師と学生の間のフィードバック対話を分析するためのフレームワークとして使用
分析結果から、学生の学習における対話的フィードバックの4つの潜在性を提案
これを研究者がフィードバックの学習可能性をさらに調査するためのツールとして提案
方法
本研究はノルウェーの大学での1年生のビジネスコミュニケーションコースにおける口頭フィードバック対話を対象
データ収集には、音声記録、観察記録、フィールドノート、評価テンプレートが使用された
対話的次元の分析に基づき、対話の維持や学生の発言の促進などを評価した
わかったこと:
対話的フィードバックが学生の学習を支える
感情的および関係的サポート:
教師(アンドリュー)は、学生に対して個別化されたフィードバックを提供し、モチベーションを向上させている
フィードバック対話では、「私はあなたに成長してほしい」などの個人的な代名詞や感情的な言葉を用い、信頼関係を構築している
学生が緊張や不安を示した際には、共感を示しながらサポートを行い、学習への積極的な関与を促進している
フィードバック対話の維持:
対話は動的であり、教師と学生の双方がその進行に寄与している
教師は新たなトピックを導入し、また「これが理解できているか?」といったメタ質問を通じて学生の関与を促している
一部の学生は「うん」といった最小限の応答を通じて対話を維持しているが、対話の内容が深まることは限られている
学生が自分自身を表現する機会:
教師が「計画通りに進んだと思うか?」と問いかけることで、学生が自身のパフォーマンスを振り返る機会を提供している
学生は、自分の言葉で反省を述べ、教師のフィードバックに基づいて改善点を把握している
ただし、教師が学生の発言を中断する場面も見受けられ、対話における非対称性が観察されている
他者の貢献による個人の成長:
教師は新たな知識や理解を提供し、学生が異なる視点を考慮しつつ自己認識を深める機会を作り出している
身振りや手の動きといった非言語的コミュニケーションや、評価テンプレートなどのアーティファクトを活用し、学生の理解を補助している
教師の具体的な指導(例: 発音の誤りを黒板に書きながら修正する)により、学生は自身の現状と目標との差を埋めることが可能となっている
論文から得た学び
対話的フィードバックは、従来の教師主導型アプローチを超え、学生が自己反省と理解を通じて成長するための重要なツールとなり得ると主張されています。ただし、権力バランスの非対称性が存在し、学生が完全に対話を主導する場面は限られていました。