学習に影響を与える動機づけのプロセス:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は学習に影響を与える動機づけのプロセスについての論文です。
課題への挑戦意欲、困難に直面したときの粘り強さ、スキルの効果的な活用がどのように影響されるかが分かります。
今日の論文
Motivational Processes Affecting Learning
学習に影響を与える動機づけのプロセス
American Psychologist, October 1986
Carol S. Dweck
サマリ
社会認知の枠組みを用いて、適応的および非適応的な動機づけパターンを記述し、動機づけプロセスの研究モデルを提示
このモデルは、子供が認知課題において追求する特定の目標が、成功や失敗への反応をどのように形成し、認知パフォーマンスの質にどのように影響を与えるかを示す
このアプローチが実践や非適応的な動機づけプロセスを変えるための介入設計に重要な意味を持つと主張
研究の方法
本研究では、子供たちの成績目標と行動パターンの関係を理解するために、社会認知アプローチを採用
具体的には、学習目標(能力の向上を目指す)とパフォーマンス目標(他者からの肯定的な評価を得る、または否定的な評価を避ける)に基づいて動機づけパターンを分析
わかったこと:
学習目標とパフォーマンス目標が、子供の動機づけパターンや認知課題へのアプローチにどのように影響を与えるか
学習目標を持つ子供たちは、挑戦を求め、困難に直面しても高い粘り強さを示す
学習目標は、努力や戦略の分析、修正を促し、障害を乗り越えるための努力を増やす傾向がある
学習目標を持つ子供は、学習内容を新しい状況に転移させる能力が高い
適応的な動機づけパターン(マスタリー指向):
挑戦を求める:
困難な課題に対して積極的に挑戦し、克服しようとする姿勢を持つ
高い粘り強さ:
困難に直面してもあきらめず、持続的に努力を続ける
努力の価値を認識:
努力を成功の鍵とし、戦略を変えたり、努力を増やすことで課題を克服しようとする
能力の向上を重視:
新しいスキルや知識を習得することに重点を置き、自己成長を目指す
非適応的な動機づけパターン(無力感指向):
挑戦を避ける:
失敗を避けるため、容易な課題を選択し、挑戦を回避する傾向がある
低い粘り強さ:
困難に直面するとすぐに諦めてしまい、努力を続けることが難しい
能力に対する不安:
失敗を自分の能力不足と捉え、失敗が続くと自己評価が下がる
否定的な感情:
挑戦に失敗した際に不安や無力感を感じやすい
メモ:発展的フィードバックに関する記載
発展的フィードバックは長期的な学習と知的成長を促進し、失敗を恐れずに新しい挑戦に取り組む姿勢を強化する
失敗を恐れず挑戦を続ける姿勢を支える:
発展的フィードバック(learning goals)を受けることは、失敗を成長の一部として捉える姿勢を育む。これにより、個人は挑戦を恐れずに継続することが可能になる
創造的なスキルの習得と活用を助ける:
発展的フィードバックは、個人が新しいスキルを習得し、異なる状況でそれらのスキルを活用する能力を高める。具体的には、学習目標を持つことが知識の転移を促進し、創造的な問題解決に寄与することが示されている
論文から得た学びと活用場面
動機づけパターンは、認知課題における子供たちの行動に大きな影響を与えることが明らかになりました。また、学習目標を持つことで、子供たちは努力を通じて能力を活性化し、障害を乗り越え、能力を向上させることができるとされています。
適応的な動機づけパターンを育むための介入をデザインする際に役立つかもしれません。
(余談)今回発展的フィードバックの引用文献を遡っていってたどり着いた論文で、教育現場の論文が活用されていたことに研究の幅広さを感じました。
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