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トランザクティブメモリシステム(TMS)の尺度開発:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は「トランザクティブメモリシステム(TMS)」の尺度開発についての研究をご共有します。

「トランザクティブメモリシステム(TMS)」は、他の人の記憶システムに関する知識によって影響を受ける記憶のことを指します。複数の人々が協力して情報を保存、取得、伝達するためにトランザクティブメモリを積極的に使用するシステムとして定義されます。
簡単にいうと「誰が何を知っているか」についてチーム内で共有できているかという概念です。

今日の論文

Measuring Transactive Memory Systems in the Field: Scale Development and Validation
フィールドにおけるトランザクティブメモリシステムの測定:スケール開発と検証
Journal of Applied Psychology, 2003年
Kyle Lewis

サマリ

  • トランザクティブメモリシステム(TMS)のフィールド測定方法を開発し、その妥当性を検証

  • 124のチームに対して15項目のスケールを実施し、結果としてスケールが内部で一貫しており、他の指標や仮説的な原因と結果と関連していることを確認

わかったこと①:
トランザクティブメモリシステムの構成要素

P594

トランザクティブメモリシステム(TMS)は、次の3つの主要な構成要素から成り立っています。

1. 専門化 (Specialization)

  • 各メンバーが特定の知識領域に特化し、その分野における専門家としての役割を果たします。チーム内で知識が分散され、メンバーが互いに補完し合う形で専門性を発揮します

2. 信頼性 (Credibility)

  • メンバー間での信頼関係が構築されていることを指します。各メンバーは他のメンバーの知識や判断を信頼し、その情報に依存します。信頼性が高いと、情報共有や意思決定が円滑に進みます

3. 調整 (Coordination)

  • チーム内で知識や役割が効果的に調整され、タスクがスムーズに進行することを意味します。各メンバーが誰が何を知っているかを把握しており、必要なときに適切な情報を効率的に利用できる状態が維持されます

わかったこと②:
トランザクティブメモリシステム(TMS)を測定するための尺度

P604

専門化 (Specialization)

  1. 各チームメンバーは、プロジェクトのある側面に関して専門知識を持っている。

  2. 私は他のチームメンバーが持たないプロジェクトの側面について知識を持っている。

  3. 異なるチームメンバーが異なる分野の専門知識を担当している。

  4. プロジェクトの成果物を完成させるために、いくつかの異なるチームメンバーの専門知識が必要だった。

  5. どのチームメンバーが特定の分野で専門知識を持っているかを知っている。

信頼性 (Credibility)

  1. 私は他のチームメンバーからの手続きに関する提案を快く受け入れた。

  2. 他のメンバーのプロジェクトに関する知識が信頼できると感じていた。

  3. 他のチームメンバーがディスカッションに持ち込んだ情報に自信を持っていた。

  4. 他のメンバーが情報を提供したとき、自分で再確認したいと思った。(反転項目)

  5. 私は他のメンバーの「専門知識」にそれほど信頼を置いていなかった。(反転項目)

調整 (Coordination)

  1. 私たちのチームは、うまく調整された方法で協力して働いた。

  2. 私たちのチームには、何をすべきかについての誤解がほとんどなかった。

  3. 私たちのチームは何度も最初からやり直さなければならなかった。(反転項目)

  4. 私たちはタスクをスムーズかつ効率的に達成した。

  5. タスクをどのように達成するかについて多くの混乱があった。(反転項目)

すべての項目は、5段階の同意―不同意の回答形式を使用しています。1 = 強く不同意、2 = 不同意、3 = 中立、4 = 同意、5 = 強く同意。

論文から得た学びと活用場面

トランザクティブメモリシステム(TMS)の構成要素や尺度が分かりました。
今、タレントマネジメントシステムなどを利用して、オンライン環境化でも「誰が何を知っているか」を共有しようという試みが増えてきています。一度このような尺度を使ってみると、機能しているのか振り返るきっかけになるかもしれません。

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