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自己効力感による行動変化:論文レビュー

こんにちは、原田です。
現在、修士論文で取り扱う自己効力感について深堀り中です。
今回は自己効力感を二つの実験で検証した論文をご紹介します。

今日の論文

Analysis of Self-Efficacy Theory of Behavioral Change
自己効力感理論による行動変化の分析
Cognitive Therapy and Research, Vol. 1, No. 4, 1977
Albert Bandura, Nancy E. Adams

サマリ

  • 行動変化に関する自己効力感理論を2つの実験で検証した結果を報告

  • 最初の研究では、系統的脱感作(Systematic Desensitization:特定の恐怖や不安を持つ個人に対して、その恐怖や不安を徐々に減少させるために用いる心理療法の一種)が自己効力感を強化することによって回避行動の変化を引き起こすという仮説を検証

  • 脱感作による恐怖の完全な消去は自己効力感の向上をもたらし、自己効力感とパフォーマンスの一致度のミクロ分析により、自己効力感が行動変化の正確な予測因子であることが示された

  • また、自己効力感が不安の喚起を仲介するという見解を支持する結果も得られた

  • 第2の実験では、参加者のモデリングを通じて治療中における自己効力感と行動変化のプロセスを調査し、自己効力感が脅威の部分的な克服から得られる行動改善量の優れた予測因子であることが示された

研究の方法

第1の実験(Experiment 1)

  1. 目的

    • 系統的脱感作が、個人の自己効力感を高めることで回避行動を変化させるかどうかを検証する

  2. 被験者

    • 慢性的な蛇恐怖症を持つ者

    • 大部分が女性

  3. 手法

    • 事前評価:

      • 行動回避テストと自己効力感期待の測定

      • 被験者に恐怖を引き起こすタスクを実施させ、その期待と恐怖レベルを評価

    • 系統的脱感作:

      • リラクゼーションと恐怖シーンの段階的な想像

      • リラクゼーションを通じて恐怖を軽減

    • 事後評価:

      • 治療前後で自己効力感と行動の変化を測定

  4. 結果

    • 系統的脱感作によって自己効力感が向上し、回避行動の減少が確認された

    • 効力感の高まりが行動変化の強い予測因子であることを確認

第2の実験(Experiment 2)

  1. 目的

    • 治療中における自己効力感と行動変化のプロセスを調査し、参加者モデリングの効果を評価する

  2. 被験者

    • 同様に慢性的な蛇恐怖症を持つ者

  3. 手法

    • 行動回避テスト:

      • 前実験と同様に、蛇に対する恐怖レベルを測定

    • 段階的治療と評価:

      • 失敗したタスクのブロックに対して、参加者モデリングを実施

      • タスクを成功させた後に自己効力感を評価し、次の段階に進む

    • 参加者モデリング:

      • セラピストが恐怖対象との相互作用をモデル化し、被験者が模倣する

わかったこと
自己効力感と行動変化の関係

  • 自己効力感のレベル(Level of Self-Efficacy) 脱感作治療を受けた恐怖症患者は個人的な効力感の期待が大幅に向上した

  • 恐怖の消去(Fear Arousal Reduction): 象徴的表現による恐怖の消去により、脅威に対するアプローチ行動が大幅に増加した

  • 自己効力感とパフォーマンスの一致度(Congruence between Self-Efficacy and Performance): ミクロ分析により、自己効力感は脅威に対するアプローチ行動の高精度な予測因子であることが確認された

論文から得た学びと活用場面

実験により、自己効力感の変化が、その後の行動変化を予測する強力な因子であることが検証されました。
自己効力感という概念はこういった実験によって検証されていたのだという新鮮な驚きがありました。

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