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製薬メーカーの勉強会で講演させていただきました

こんばんは。はらメディカルクリニック院長の宮﨑です。

昨日は、ISO外部監査1日目に加えて、製薬メーカーの勉強会もありました。不妊治療で使用する薬剤を製造されているメーカーのMRさん向けに当院の体外受精でどのように薬剤決定がなされ、使用されているのか。妊娠率を上げるために当院が行っていることなどをzoomにて講演させていただきました。

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✓採卵数や成熟卵獲得については以前に詳しくnoteに記載しましたので排卵誘発の選択基準をご覧ください。

✓使用する薬剤の選択については、下の表のように自然なホルモン分泌同様にLH活性の低いものから順に、ゴナールエフペン (FSH 1:LH 0)、ゴナピュール(1:<0.0053)、HMGフジ(1:1/3)、HMGフェリング (1:1)を揃えており、状況に応じて使い分けています。採卵周期はクロミッドを併用することが多いですが、これにより内因性LHの分泌がある程度促されることもあり、若年で卵巣機能に問題なければLH活性の低い製剤だけにすることもあります。アンタゴニストを用いるとFSHとLHの分泌量が低下するため、同時にLH活性の高いHMGを必ず用います。LH受容体の反応性は年齢とともに低下する (Piltonen et al, 2003) ため、高年齢の患者様には LH活性の高いHMGを積極的に最初から用います。

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✓LH活性の高いHMGを積極的に最初から用いる利点は他にもあり、LHを卵胞期早期から投与することで、莢膜細胞におけるアンドロゲン産生が促進され(Hillier et al, 1994)、アンドロゲンにより前胞状卵胞および胞状卵胞のFSH感受性が増加することが考えられます。 (Gervasio et al, 2014)

✓適切な排卵誘発を選択したつもりが、結果的に採卵数が少なかった場合は、まず刺激量の見直しをします。また、LHサージの修正も重要です。LHサージは薬剤の種類がいくつかありますのでそれらを複数組み合わせてしっかりとサージを起こします。

✓未熟卵が多い場合は、意図的に卵胞発育を待ってからLHサージを実施します。またこのケースでもLHサージの薬剤を複数組み合わせることも有効です。

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✓胚盤胞に達成しない、あるいは胚盤胞の質が低い場合は、卵の質を改善する目的でレスベラトロール (Takeo et al, 2014)、メラトニン (Tamura et al, 2020)を推奨することがあります。

✓初期胚まで正常な分割にもかかわらず、その後胚分割が進まない場合は精子の原因が考えられるためDFI検査を行いサプリメントの服用や当院の男性不妊外来をご案内します。

✓胚盤胞数を増やす方法としてタイムラプスが有益です。タイムラプス培養は特に年齢が高い層において顕著に胚盤胞数が増えています。以下は当院データです。タイムラプスを使用される方は過去の治療で胚盤胞到達率が低い方が多いためタイムラプス使用なし群の胎盤胞発生率は一般的な数値より低めです。しかしそのような場合でもタイムラプス培養で大きく改善されています。

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このほかに、勉強会では、
・子宮内膜症とIVF
・移植で重要な点
・胚のグレード別妊娠率
・着床不全
・抗リン脂質抗体・凝固関連タンパク
・臍帯幹細胞培養上清液
についてお話しましたので、これらについてはいつか記載したいと思います。

勉強会の最後にはMRの方から質問をいただきました。いずれも担当されている医療機関にこの勉強会の内容を少しでもフィードバックできるようにという意志を感じるものでした。私たち医師はこのようなMRさんのフォローに普段から支えられていることも改めて感じた時間でした。いつもありがとうございます。

そして、今日はISO外部監査2日目でしたが無事監査は終了しました。不適合0件という結果に、当院のマネジメント体制に合格点をいただけたと胸を撫で下ろしました。特に評価いただいたことは、妊娠成績の向上。審査員の方から「私は医師には厳しいのですがこの結果はお見事でした」と。また培養部の取り組みとして培養士ごとに胚盤胞達成率のデータを取り、日々チェックと修正をしていることも高く評価いただきました。改善提案も4点いただきましたのでプロセスの修正をすべきかどうか会議で話し合いたいと思います。

今日も一日お疲れ様でした。おやすみなさい。




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