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蚊にお尻を刺された時

野菜はお好きだろうか。私は28歳をすぎる頃どうにもお肉を食べる量が減ってきて、野菜ばかりを食べるようになった。ついに野菜の美味しさに気付いたのだろう。よく母が焼肉に行った時肉より野菜が美味しいと、学生の自分には意味不明なことを言っていたが、30歳を差し迫った今ようやく意味を理解できるようになった。

そんなこんなで野菜大好きの私は家の庭を耕して畑を作り、野菜を栽培している。トマト、ピーマン、きゅうり、大葉、なす、ズッキーニ、オクラ、パプリカ、ハーブ諸々とメジャーな夏野菜を育てているので毎日の管理は欠かせない。水やりであったり雑草の処理であったりと、日々畑の様子を見守りらないといけない。そこでこの時期に厄介なのが虫、食害もそうだが殺意が最もわくのが蚊。ぶんぶんと顔の周りを飛んでは人の血を吸う不快害虫。血なら吸わせてあげるから痒くするのは違うだろ、ありがとうぐらい言ったらどうだと思う。

よく夫婦で畑作業をするとき妻のお尻にばかり蚊が血を吸い、私の方はせいぜい2箇所ほどしか刺されなかった。妻のお尻はボコボコにはれ真っ赤になることが多い。なんてすけべな蚊だろうか。

そんな中一人で作業している日に今度は私のお尻が大惨事になったことがある。大きな猫の肉球みたいな模様に腫れていたため刺した蚊にセンスを感じたが、お尻って特に痒い。気が狂ったように掻きむしりたくなる。と、荒れる心とお尻をウナクールのちょっといいやつで鎮める。待てよ、ということは二人で作業していた時は妻が私の代わりとなって刺されていたのではないだろうか。蚊はより好んで妻のお尻から血を頂戴し、私からはついでにちょっと吸っとくかくらいだったのではないだろうか。すまない妻よ私の代わりにお尻が大変なことになっていたとは、お尻大惨事を経験して妻が犠牲になっていたことに初めて気付いた。と同時にこうやって生贄は誕生するのかとも思った。

あれ以来蚊対策に余念はない。厚手のズボンに長袖のシャツ、顔を覆える帽子に全身への虫除けスプレー、と完全防備で畑へと繰り出すがそれでも1箇所は刺される。セキュリティの穴を掻い潜って命からがら1箇所でも吸うのだろうがはた迷惑なので本当にやめてほしい。一度蚊も血を吸われてみればいいと思う。人間の気持ちが理解できればもう二度と痒くしてやろうとは思わないはずだ。

そもそも蚊なんて居なくなればと心から思う。が、それはそれで蚊を食料にする虫とか鳥とかそういった食物連鎖のバランスがどうせ崩れるんだろうから根絶するわけにはいかないんだろう。どうせね。

拝啓、蚊様
人間が苦しめられております。
血は吸っていいので、せめて痒くするのだけは勘弁してください。
よろしくお願いいたします。
敬具



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