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小杉湯というカルチャー

こんにちは!ハラガク(@kugaraha)といいます。東京在住27歳男です。
ぼくは現在とあるIT企業ではたらいていますが、去る年末からこの春まで、高円寺にある銭湯小杉湯にてお手伝いをしていました。

きっかけはTwitterで見かけたこのつぶやきでした。

大好きな小杉湯で働ける願ってもない機会ということで即応募した次第です。
本業の合間をぬっての短い間でしたが、得難い経験ばかりだったのでnoteに残そうと思います。

■繁盛の秘密なんてない
言わずとしれた都内屈指の人気銭湯の小杉湯ですが、ぼくがはじめて足を運んだのは3年前のことでした。
実を言うとはじめての小杉湯は「”ふつう”すぎてちょっと拍子抜けした」というのがそのときのぼくの正直な感想です。
もちろん気持ちよかったし、何ひとつ不満はありませんでした。
けれど東京随一との呼び名の高い銭湯であるからには、きっと心踊る体験があるのだろう思って行ってみた手前、ちょっぴり肩透かしでした。

しかしながらその後都内の様々な銭湯に行ってみて、小杉湯の”ふつう”は結構すごいことなんだなと気付きました。
カビの見当たらない真っ白な天井とか、暖かい脱衣所とか、無料の貸しタオルや備え付けのシャンプーに無料のWi-fiも、普段当たり前すぎてありがたみを感じにくいものが揃っている銭湯って、案外ない。
シャンプーにしてみても業務用のリンスインシャンプーじゃなく、クラシエのシャンプーとコンディショナー、クレンジングオイル(女湯のみ)が揃っていて、脱衣場には化粧水と乳液まで置いてあります。

温泉旅館ならまだしも、街角の銭湯でこれだけのアメニティを置いてあるのは滅多にないんじゃないでしょうか。

そしてこの”ふつう”を作り上げ維持していく大変さを、実際に番頭としてはたらいてみてひしひしと感じました。
たとえば小杉湯は毎晩1時半の営業終了後に、3人のスタッフが3時間近くかけて掃除してるんです。すごくないですか?
これだけ繁盛しているのは何か秘策があるにちがいないと思っていたけれど、そんなものは存在せず、”ふつう”であり続けるための努力があるのみでした。

■入れば入るほど好きになる、それが銭湯
銭湯ではたらいておきながら言うのもなんですが、ぼくは銭湯大好き人間ではありませんでした。
実家を離れて10年。ひとり暮らしをはじめて以来、もっぱらシャワーのみの生活に満足していました。

そんなぼくですら、小杉湯の仕事ついでに毎回銭湯に入っているうちに、気づけばその魅力にどっぷりはまってしまったわけです。
例えば小杉湯にシフトが入った日でも、タイミングが合わずに風呂に入れないときもあるんですが、そんな日はめっちゃ萎えるんですよね。
もちろん家に帰ったらシャワーがあるんだけど、どうも気乗りしない。
そうか銭湯って身体の汚れを落とすためだけに入ってるんじゃないんだな、と。

■水風呂で突如おとずれる無敵ゾーン
小杉湯は「交互浴」の聖地としても知られています。交互浴とは熱湯(あつゆ)と水風呂を交互に入る儀式(入浴法)です。
ぼくはもともと水風呂が好きではありませんでした。冷たいもん。
けれど周囲の人間が水風呂はいいぞ〜、交互浴抜きじゃ小杉湯を100%味わえていないぞ〜とうるさいので渋々やってみたら、あれ?いいじゃん、と(笑)

もちろん何回入っても水風呂は腹が立つくらい冷たい(小杉湯の水風呂は13℃!)けど、30秒くらい我慢して入り続けていると突如「あれ?冷たくない…これずっと入ってられるんじゃ?」っていう無敵ゾーンが訪れるんです。…これ共感してくれる人いるかな!!!
その無敵ゾーンの心地よさを知り、ぼくはまんまと交互浴にはまっちゃいました。

■タオルたたみというマインドフルネス
番頭の仕事のひとつにタオルたたみがあります。単調で地味な作業ではあるのですが、ぼくはこの作業が嫌いじゃありませんでした。
黙々とタオルをたたんでいると、”無”になれる。
特に開店前の誰もいない脱衣場でひとりでタオルをたたんでいるときなど、とても安らかで静かな気持ちになれます。
心を無にして黙々と作業をする…ああこれは一種のマインドフルネスなんだなと。

この前おもしろい記事を見つけました。

ジェフ・ベゾスとビル・ゲイツともあろう大富豪が毎日自分で皿洗いをしていて、それはマインドフルネスに通ずるものがあるんじゃないかという記事。
小杉湯のタオルたたみも正にこれだ!
しかもバスタオルに関してはそこらへんのタオルじゃなくてイケウチオーガニックですからね。
あのふっかふかの肌触りは間違いなくマインドフルネスを促進している…かはわかんないけど、本当にずっと頬ずりしていたくなるバスタオルなので、小杉湯にいらした際にはぜひレンタル(¥40)することをおすすめします。
イケウチオーガニックの中の人も絶賛しとります。


■まとめ的な
小杉湯って銭湯にしてはすごく張り紙(注意書き)が少ないんです。
普段銭湯に行かない方にはピンと来ないかも知れませんが、銭湯によっては張り紙だらけだったりします。
「身体を洗ってから入って」「泳がないで」「大声出さないで」「ロッカーキーを無くしたら罰金○○円」などなど…。
どれも真っ当なことです。昔からのお客さんと一見さんや観光客の方とのトラブルを避けるためもあると思います。
とはいえすべてを明文化してただしていくのって、窮屈じゃないですか。
その塩梅ってすごくむずかしい。

その上で小杉湯は張り紙が最低限のものしかない。
その代り目につくのは日替わりの湯について書かれたポップや、交互浴の案内などです。

にも関わらず、小杉湯はお客さん同士のトラブルってほとんどない。(ゼロじゃないけどね!)
なんでかなと考えたときに、それは小杉湯にはカルチャーが育まれてるからだと気づきました。

つまり小杉湯が好きな人たちが、先代から入り続けてくれている地元のおばあちゃんおじいちゃんにはじまり、ぼくのように最近小杉湯を知った若者までじわりじわりと広まり、今や銭湯図解を出した塩谷さん(@enyahonami)をはじめ小杉湯発の新たなカルチャーが生まれている。
小杉湯を愛する気持ちが、高円寺の街に留まらずSNSなどメディアを通じて、まるで湯煙のようにじわじわといろんな人たちに伝播していく。
愛する気持ちがあったら自ずと愛のある行動をとるじゃないですか。
そしたらトラブルもなくなるんだろうなあと。
なにかを永くつづけていく秘訣は、ルールで縛らずカルチャーで包むことにあるんじゃないでしょうか。
ぜひ小杉湯のカルチャーに包まれに、足を運んでみてください。

読んでいただいてありがとうございました。

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そんな小杉湯は現在女性の番頭アルバイトを募集中です。

そして今月から待望の朝湯(5月は日曜限定)がはじまりました。

以前ぼくもイベントで特別に朝湯に入ったことがあったんですが、これがまたよい!
高い天窓から朝の光が差し込み、湯煙のおかげでそれはそれは幻想的な光景になります。ぼくとしてはむしろ朝の方が好きかも知れない。
サイコーのサンデーモーニングをぜひ小杉湯で!

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