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労働者協同組合を1ヶ月で立ち上げた話

正確には労働者協同組合の立ち上げをサポートした話。
2022年の11月に始まった制度で、国や自治体が結構力を入れているのを感じる。私は2023年の4月に労働者共同組合という制度の存在を知り、5月に登記まで終えたんだけど、黎明期ということで、微妙に情報の収集が大変でした。この記事では法人立ち上げにあたり、必要なことや注意点などを主観的に紹介していきます。(労働者協同組合とはなんぞ、というのは別記事で)

前半は1.発起人集め~6.出資の払込みまで。後半は7.設立登記~9.設立後の手続きについて紹介します。

設立(法人登記)までの流れ

設立までの流れは、厚生労働省の情報提供サイト「知りたい!労働者組合法(https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/howtobegin)」や各自治体のホームページなどに記載されている通り、次のような流れになる。

  1. 発起人集め

  2. 必要書面作成

  3. 創立総会の公告

  4. 創立総会開催

  5. 理事会を開催

  6. 出資の払込み

  7. 設立の登記@法務局

  8. 設立の届出@都道府県庁

  9. 保険・税務関係手続き

1.発起人集め

労働者協同組合は最低3名の組員で構成できる。なので発起人(=組員となる意思のある人)も、自分を含めて3名入れば良い。

ただ、法人の登記までには監事となってくれる人も集めないといけない。監事は外部(=組員ではない人)でも良いし、なってくれる意思さえあれば、税理士などの資格も不要だ。

監事は(組合が一定の規模になるまでは)組合員から選んでも良い。しかし、ここに罠(!?)があって、労働者協同組合は役員となる組員数が全体の1/3以下でないとならないと法律で決められている。
つまり、発起人を4人集め、1人が代表理事、もうひとりが監事、それ以外が理事としてしまうと、「役員」が2人・「役職なし」が2人となり、役員となる組員が全組員の2分の1となり設立要件を満たさなくなってしまうのだ。
したがって、もし外部監事が嫌ならば、組員を6名集めなければならないことになる。

2.必要書面作成

労働者協同組合を立ち上げる場合、設立総会の前に公告が義務付けられている。したがって公告前にある程度書面を準備していないといけない。
厚生労働省の情報提供サイト「知りたい!労働者組合法(https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/howtobegin)」には必要書類として以下の書類が挙げられている。

  • 定款

  • 事業計画書

  • 収支予算

  • 役員の氏名及び住所

  • 役員となる者の印鑑証明、本人証明書等

が、公告時点での必須書類は「定款」だけである。それ以外は時間と相談しながら、できる範囲で用意しよう。
また、書類ではないが、公告を設置するための場所(仮事務所など)印鑑(法人印や代表者印)必要であるので、早めに準備する。

定款

法律で明記しなければならない15項目が定められている。

  • 事業

  • 名称

  • 事業を行う都道府県の区域

  • 事務所の所在地

  • 組合員たる資格に関する規定

  • 組合員の加入及び脱退に関する規定

  • 出資一口の金額及びその払込みの方法

  • 剰余金の処分及び損失の処理に関する規定

  • 準備金の額及びその積立ての方法

  • 就労創出等積立金に関する規定

  • 教育繰越金に関する規定

  • 組合員の意見を反映させる方策に関する規定

  • 役員の定数及びその選挙又は選任に関する規定

  • 事業年度

  • 公告方法

上記項目を盛り込んで、作成しよう。自治体によってはモデル定款が公開されているので、参考にすると良い。
なお、定款は設立総会を受けて修正が可能なので、完璧なものを作り上げよう、などと意気込まなくても大丈夫である。

事業計画書

こちらも特に決まった書式はない。
金融機関などに融資をお願いする場合に提出するものを流用してしまって構わない。融資を募る予定がないのであれば、収支計画などの記載は大まかで構わない。

収支予算

こちらについては事業計画書とまとめてしまった。煩雑になるようなら分けたほうが良い、と思う。
事業計画書と収支予算は設立にあたっては提出義務がないので、柔軟に対処してよい、はず。

役員の氏名及び住所

公告前の時点では必要ない。
なお、役員とは「役職」を持った理事のことであり、役職を持たない理事については必要ない。最低人数で設立する場合、役職者となるのは代表理事のみである。

役員となる者の印鑑証明、本人証明書等

公告前の時点では必要ない。
上述の通り、役員とは「役職」を持った理事のことである。

3.創立総会の公告

設立総会の2週間前までに日時、場所、定款を告知する。
電子公告などの手段も取れるが、要件が面倒くさい&結構な費用が必要なので事務所などに掲示板を設けたほうが楽ちん。
事務所の用意が間に合っていない場合、公告場所は発起人の自宅でもよい。
NPOの設立ほど厳格ではない。

4.創立総会開催

公告に従って設立総会を開催する。
議題としては、
・定款の承認
・事業計画書
・収支予算の議決
・役員(理事・監事)の選挙などである

組合員となることを承諾した者の半数以上が出席し、2/3以上の多数による決議が必要。
定款次第だが、選挙ではなく選任としても良い。
ここで決める役員とは理事(=理事会の構成員)のことであり、登記の際の役員(=役職を持った理事)とは異なる。
定款の定めに従って議事録の作成を行う。
理事の就任について、即時承諾した旨議事録に記載すれば、就任承諾書の提出は不要。

5.理事会を開催

定款に定めがある場合は、それに従って臨時理事会を招集する。
監事(外部監事)も理事会に出席しなければならない。
選挙または選任によって、代表理事を選出する。
(定款に定めがある場合は、他の役職-副理事とか専務理事とか-も選出する。ただし、組合員の総数に対する役員数が1/3を超えてしまうと法人の設立要件から外れてしまうので注意が必要
議事録の作成を行う。
役員の就任について、即時承諾した旨議事録に記載すれば、就任承諾書の提出は不要。

6.出資の払込み

組員から出資を受ける。
このとき、組員からは出資金と一緒に「出資引受書」を提出してもらう。
組合からは、受領書を発行する。
出資引受書受領証の控えは両方とも登記の際必要になるので、きちんと用意しておく。

以上が前半の内容になります。
ところどころ罠があったり、微妙に足りてない部分もありましたが、本筋としては厚生労働省の「知りたい!労働者組合法(https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/howtobegin)」を見ながらじっくり進めて行けば、そんなに苦労しないんじゃないかと思います。

後編では7.設立登記以降について紹介するので、よかったらそちらもどうぞ。

以下では、購入者限定で、利用させて頂いた雛形や注意点・気になったこと、実際に作成した書類などをシェアしたいと思います。(雛形については公開されているものを利用しているため、頑張って探せば出てきます。)

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