日本で最も強い権力を持つ組織は、どこだろうか。 首相官邸? 検察庁? 自衛隊? 財務省? 筆者は、警察だと思う。 人の身柄の拘束や家宅捜索、押収ができる。令状請求を裁判官は簡単に認める。法律上の権限や知識は検察庁が上だが、警察は実力行使する力と武器を持ち、公安をはじめとする秘密の情報網も持つ。 全国に約30万人を擁する巨大組織。都道府県ごとに分かれていても、警察庁採用のキャリアが仕切る。 階級社会だが、人間の集団なので、一枚岩ではない。正義感の強い人もいればヒラメ
前回は、道路偏重の行政を改め、鉄道の土台に公費を投じるべきだと強調した。ただし、私自身はいま自営業なので、主に軽自動車で移動する。 クルマを運転していて、いちばん怖いのは何だろうか? 暴走車? 大型車? 子ども? 警察の取り締まり? いやいや。いちばん怖いのは、自転車である。 自転車の人は、狭い空間をすり抜けたり、フラフラと不安定だったり、予想外の急な動きをしたりするからだ。とくに右側通行されると、相対速度が大きくなって怖い。 一方、歩道を走る自転車が人
人の移動、物の輸送は社会の維持・発展に欠かせない。日本でも交通網は年を追うにつれて整備が進み、どんどん便利になってきた。 ――と言いたいところだが、本当にそうだろうか? 確かに、高速道路の建設は進んだ。列島の骨格と主要な分岐は完成。近年は過疎地を含むネットワーク化と、新名神のような二重化が進む。 航空では、関西、中部の開港や羽田の拡張が行われ、地方にも空港が増えた。 鉄道はどうか。新幹線は九州、北海道、長崎にも走り、今年3月には北陸新幹線が敦賀まで延伸。リニア中央新
恐怖、苦痛、屈辱、トラウマ。そして医学的な危険性。 今回の診療報酬改定でいちおう評価できるのは、身体拘束の最小化を、病院の入院料の算定要件に加えたことだ。 示された基準によると、拘束は生命または身体を保護するために緊急やむをえない場合を除いて行ってはならない。行う場合は拘束の態様、時間、患者の心身の状況、やむをえない理由を記録する。 医療機関は最小化チームを設け、拘束の実施状況の把握、指針作成、研修などを行う。 これらを満たしていないときは、病棟の全患者の1日あた
ひどくなめられてるのに、反応がおとなしすぎないか。 医療・介護・障害福祉のトリプル報酬改定の話である。 診療報酬のうち薬価を除く本体は0・88%、介護保険サービスは1・59%、障害福祉サービスは1・12%のアップだという。 具体的な点数は横に置いて、マクロに考えてみよう。 いちばんの問題は、物価上昇を無視していることだ。 診療報酬は2年ごと、介護と障害福祉の報酬は3年ごとの改定だから、その間の物価上昇に見合う引き上げでなければ、実質的にダウンする。 公表分
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者から頼まれ、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人罪に問われた男性医師に対する裁判員裁判が京都地裁で進んでいる。 「本人が望むなら、かなえてあげたいと思った」と、被告人の医師は公判で述べた。 弁護側は「死を望む女性に生きることを強制するのは個人の尊重を定めた憲法に違反する」と無罪主張している。 全身の筋肉が動かせなくなった苦悩は、想像を超える。 人生を終えたいという自己決定権は、究極的には確保されるべきかもしれない。 しかし、
<強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない> 米国の作家レイモンド・チャンドラーの小説で私立探偵が語るセリフだ。昔、映画のCMに使われ、有名になった。 この言葉がカッコいいのは後半があるからだが、現実の社会ではまず強さを求められる。 学校の先生も、弱い子ではダメだ、強くなれと言う。 たしかに社会生活で、苦情の伝達や交渉が必要な場面は多い。 社会保障、福祉はある程度まで整備され、金銭収入、医療の利用、日常生活をサポートする仕組みは一応ある。
小中学校の先生のオーバーワークが問題になっている。 多すぎる事務作業、足りない授業準備時間、放課後や土日に活動するクラブの顧問、保護者からのクレーム……。 公立学校の教員には、給料に4%上乗せする代わりに、時間外や休日勤務の手当を支給しない給与特別措置法が残る。 昔と違って長期休暇中も学校へ出ないといけない。 メンタル不調の教員は増え続けている。労働実態が知られるにつれ、教員志望者は減り、人手不足も生じている。 そこで進められているのが少人数学級化。小中学校と
物価が上がっている。著しい円安と原油高などで、エネルギー価格も輸入品も国内産品も値上がりした。 8月の消費者物価指数(全国)は、前年同月比3・2%増。2020年基準と比べて5.9%上昇した(特に食料品は13・5%増)。 第2次安倍政権発足直後の13年1月と比べると、2度にわたる消費税率アップもあり、12・4%も高くなった(食料品は27・5%増)。 物価上昇で貨幣価値が下がったら、同じ収入額では、生活水準を維持できない。資産家以外は生活に困る。 コロナ禍の景気低迷と
自分の立場や有利不利のために都合よく主張することをポジショントークと言う。近年生まれた和製英語らしい。 福島第一原発からの汚染処理水放出をめぐる言論の状況は、ポジショントークが多くて、うんざりする。 科学的とは、批判的検討を含めて事実を検証しつつ、論理的かつ冷静に考えること。 政府が科学的だと言ってるから、IAEA(国際原子力機関)が許容したからと言うのも、わずかでも危険だと言うのも、科学的ではない。 このテーマを科学的に論じるのは簡単ではない。物理、化学の基礎知
言葉は、けっこうなスピードで変化する。流行語もあれば死語もある。地域や年齢による違いも、感性の個人差もある。これが正しい、これは間違いと簡単には言えない。 とはいうものの、イラっとくる日本語が、筆者にとっては、いくつかある。 一番手は「させていただきます」。おそらく10年ぐらい前から急速に、あちこちで耳にするようになった。 これは謙譲語の一種。えらそうにならないよう、相手の許可や指示に感謝するかのように表現する。使う人が増えたのは、主体的決定を避けたがる日本社会の風
行政にも良い人、熱心な人は確かにいる。でも役所とやりとりしていると、腹の立つ場面がしばしばある。 公務員に多く見られる傾向と、対処法を考えてみたい。 第1に、ルールにこだわる。 多様な案件を扱うには一定の基準が必要だから、法律、規則などに照らして判断する。中央省庁はそれらをよく把握しているが、自治体では法律や規則をよく知らない職員が、その部署の単なる慣習をルールと称していることがある。 役所の回答に納得できないときに、情に訴えても実りは少ない。「法律はどうなってい
法律、会計などの国家資格を取得すれば、いわゆる「士業」として独立開業できる。 国家試験はいずれも難関だが、実は、隠れたルートがある。特に公務員は優遇されていて、長く勤めたというだけで、試験を受けずに資格を取れたりする。 行政書士(筆者もその1人)は、許認可申請や権利義務に関する書類作成が主な仕事だ。試験科目は憲法、行政法、民法、会社法など。 しかし国や自治体などでの行政事務の経験(補助的事務は除く)が高卒以上の場合で17年あれば、無試験で行政書士登録できる。警察や消
閑古鳥が鳴いたらどうするのか。 大丈夫だと言うなら知事、市長、維新幹部、賛成した議員らは、この事業で負けた時に備え、大阪市に個人で連帯保証したらどうか。 カジノを中心にした統合型リゾート(IR)を大阪市の人工島・夢洲に設ける計画を政府が認定した。 賭博は刑法で処罰対象の犯罪。なのに民間会社の賭博場を初めて認めるのだから、ギャンブル依存、闇金業者、資金洗浄などが心配される。 それ以上に筆者が懸念するのは、そもそも施設の経営が成り立つのか、失敗した時に自治体に巨額の
こんな事態をいつまで繰り返すのか。精神科は特殊な世界だとして済ませるのか。 精神科病院での患者虐待が、またもや発覚した。 滝山病院(東京)で、看護師の1人が患者への暴行で逮捕され、罰金刑を受けた。もう1人も書類送検された。4月には、さらに1人が逮捕された。 病院の実態をNHKの取材チームが暴いた。暴言を浴びせるスタッフ、大きな床ずれのできた患者。違法拘束、過剰医療の疑いも浮かんだ。 滝山病院は、人工透析の必要な患者を含め、首都圏の広範囲から入院を受け入れてきた。
健康保険証を2024年秋に廃止し、保険資格の確認方法をマイナンバーカードに一本化する。河野太郎デジタル大臣がそう表明し、多くの不安と反発を呼んでいる。 マイナカードを常に持ち歩くことになり、紛失や盗難のリスクが高まる。再発行に時間がかかり、受診や身分証明に困る。 任意のはずのカード保有を実質的に義務付けるのはおかしい。個人情報の把握を拡大して、国家権力が監視に使うのではないか……。 もっともな懸念である。 カードが公的身分証明書を兼ねる方式を取ったため、カード