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「光を放つ告白」

「ケイコちゃんに告白しようと思っているんだ」
タケシから相談を受けたのはまだ少し肌寒さの残る5月。

ケイコちゃんはクラスのマドンナ的存在だ。
艶のある黒髪に、スラッとした佇まいの彼女は
本人の輝きは言わずもがなだが、
周りを照らしてくれる明るさがあり
誰からも好かれるという稀有な存在だ。

「明日の夜、学校が終わってから源氏川の辺りで
想いを伝えようと思うんだ。」

あぁ、あそこなら静かで、川の流れもゆっくりだし
落ち着いて伝えられるかもな。

当日、心細いというタケシに付き添い、
待ち合わせ場所から離れた場所で様子を見ることにした。

しばらくするとケイコちゃんの姿が。
こっちも緊張で喉が乾く。この川の水は飲めるだろうか。

「なに?話って?」

その日のケイコちゃんからは、いつもの輝きが感じられず
どこか影を落としているように見えた。

(ピカー!)

「これが僕の想いだよ!受け取って!」

力の限りお尻を光らせて想いを表現していくタケシ。

我々ホタルの世界では強い光が想いの強さを表すのだ。

タケシの思いとは裏腹に、
暗闇に幻想的に映る光源は、
いつまで経ってもふたつになることはなかった。

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