犬はどうやって学ぶの?#1ここから始まるトレーニングの基本のき
レッスンを始める前に、まずは飼い主さんからたっぷりお時間を頂き、ワンコの様子を見させてもらいながら、飼い主さんの愛犬に対するお悩みをたくさんお話しいただく「カウンセリング」から行なっています
そこで、
なぜ?犬がそのような行動をとるのか?
飼い主さんのお悩みや疑問を細かく解説をして
そのうえで、どのようにしていくのか?
これからのカリキュラムを立てるため、カウンセリングは重要な要素になります
今回は、カウンセリングの中でお話しさせて頂いていることの一部
「犬はどうやって物事を学ぶのか?」
それと、トレーニングの第一歩としてとても大事な基礎の部分
「トレーニング基本のき」にピックアップして書きます
問題行動の改善や愛犬と楽しく暮らしていく方法のすべては
ココから始まります
実際のトレーニングはこの記事の後半から始まります
事前の解説が長いので、⑩から始まる「トレーニング開始・グータッチゲーム」から読み、ご自身で試してみてから解説を読まれてもよいかもしれません
①人の言葉はわかりづらい
あれ?うちの子は名前を呼べばこちらを見てくるし、オスワリと言えばちゃんと座るし、言葉わかってるよ?
そう思われた方もいることでしょう
ちなみに研究で
飼い主は自分のイヌが多くの言葉を理解していると考えていて、その数の平均数は32語(Pongracz 2001)というデーターもあります
言葉がわからない、わけではない
言葉はわかりづらい、ということです
ちなみに覚えている言葉でも、犬からすると言葉だけで判断しているわけでないことも多く、さらに言葉よりもわかりやすい情報があります(また別の記事で書きます)
ここで伝えたいのは
犬は、本やテレビやネットを見て、物事を学ぶわけではない
もちろん言葉を話すこともない
とっても当たり前ですよね
②理由を説明できない
私たち人間は、親・先生・上司・友人などから説明を受けて物事を学び
本・ネット・テレビなどの情報から知識をアップデートすることが多くあります
外出するときは、玄関に鍵をかける
なぜなら、不審者の侵入を防ぐため
実際に起きていない事柄でも、理由を説明されて
(知らない人が入ってきたら困るね)と、納得するから鍵をかける行動が起きる、わけです
ところが犬に対しては、
「納得できる理由を言葉で説明する」ことが出来ない
排泄を失敗したときに、飼い主さんがトイレに指差して
「ココ!ココでしなさい!!」
と説明したところで、
(なんだか怒ってることはわかるけど・・・何だろう・・・)
おそらく理解はできない。それどころか、排泄した後に飼い主が不機嫌になり、犬はより不安を感じてしまい、さらに排泄の失敗や飼い主の見ている前でしなくなるなどの問題へと発展することともある
人が不本意だと思っていることでも
犬にとって、犬なりに理由がある
人と犬とで物事の見方の違いが
ボタンの掛け違いのようなことが起きる要因にもなります
③全ては経験から学ぶ
ここからが本題です
トイレシーツ(トレー)の上で排泄してほしいな
散歩中に知らない人に吠えないでほしいな
人がそう願っていることの多くは、実際にその状況で
人でいう「成功」を体験することが出来なければ、学ぶことが出来ません
トイレシーツの上で排泄をする経験
知らない人が現れても吠えない経験
その経験をしたうえで、次も犬が同じ行動を選択したくなるような理由を作ります
ちなみに「吠えない」は行動ではないので、
なぜ吠えるのか?その理由からアプローチして、その上で吠えるとは違う選択肢を用意します(これについては別の記事で書きます)
④行動の結果
経験から物事を学びます
これを分解して考えると
犬がその行動をした結果、何が起きたのか?
非常に重要な4つのポイントがあります
行動の結果、その犬にとって
「いいこと」が起きた or 無くなった
「悪いこと」が起きた or 無くなった
①「いいこと」が起きると、その行動が増える
②「悪いこと」が無くなると、その行動が増える
(解説は⑦で説明します)
③「悪いこと」が起きると、その行動が減る
(また別ブログで解説)
④「いいこと」が無くなると、その行動が減る
(また別ブログで解説)
そう言われると理解はできますよね
ところが犬と接すると、複雑に絡んだ状況や人の思い込みで、この当たり前が見えなくなることも多い
犬の行動が増えているのは
「いいこと」が起きた ときと
「悪こと」が無くなった ときです
そして私たちが主に使うのは①いいことが起きるです
⑤オペラント条件づけ「正の強化」
いきなり専門用語で、いやだぁぁ!とならないでくださいね
できるだけシンプルに書きます
応用行動分析学の中に、オペラント条件づけ「正の強化」というのがあり説明するとこうなります
行動の直後に、その犬にとって「いいこと」が起きると、その行動を繰り返す頻度が増える
まわりくどいですが、いいことが起きると、その行動が増える。です
①飼い主が「おすわり」と言葉を発する
↓
②犬がお尻を地面につける
↓
③美味しい食べ物がもらえた
専門用語を交えて書くと
①きっかけ(弁別刺激や先行事象という)
②行動
③結果
この3つの流れを「三行随伴性(さんこうずいはんせい)」と言って
今回の記事では、
②行動③結果
だけを考えてもらってよいです
行動した結果、その犬にとっていいことが起きると、近い未来を予測できるようになります
オスワリしたら、また美味しいオヤツもらえるかも・・・
これが犬にとって行動をする「理由」となるわけです
大事なことなのでもう一度いいます
行動の直後に「いいこと」が起きると、
その行動を「繰り返す」頻度が「増える」
⑥「いいこと」は人にとって「いいこと」ではない
あくまで学習するのは犬です
その犬にとって「いいこと」が起きると、行動が増えます
例えば、飼い主さんに向かって何かしらの要求吠えがあったとします
②吠える(行動)
↓
③飼い主が犬を見る・話しかける(結果)
暇を持て余して吠えたのか、手に持っているオヤツが欲しかったのか
その状況によって違いますが
吠えた結果「飼い主の注目を得る」ことが、行動をする動機になっていることもあります
注目を得る例をすると、
トイレの失敗の場合では
②トイレ以外の場所で排泄(行動)
↓
③飼い主が注意をした(注目をした)(結果)
するとトイレ以外の場所でも排泄するようになった
このように、人が意図しても、してなくても
その犬にとって「いいこと」が起きれば、行動が増えます
⑦悪いことが無くなると行動が増える
例えば、窓の外をみて通行人に吠える犬、を分解して考えると
①窓の外に人が現れる(きっかけ)
↓
②吠える(行動)
↓
③人がいなくなる(結果)
②と③だけで考えると
「吠えたら居なくなった」
もちろん通行人は、ずっと同じ場所に止まっている訳ではないですよね
ところが、そんなことは犬にとって大事なことではなく
「あいつを追い払った!」
犬にとって大事なのは結果です
吠えた結果、人が居なくなったのであれば、
人が現れると、また吠える行動が繰り返されることになります
ドアチャイム(ピンポン)で吠える犬も同じですね
①ピンポンと音が鳴ると来客がくる(きっかけ)
↓
②吠える
↓
③来客がいなくなる
ピンポンが鳴ると、来客が来る合図と学習され
吠える行動を促す音になっています
ピンポンの音そのものに吠えているとは限らず
来客が去っていった経験が、行動を増やしているので
(または吠えることで、来客による不安を軽減している)
試しに、YouTubeでインターフォンの動画や
ご自宅のインターフォンの音色を変えることの出来るタイプなら
全く違った音色やメロディーに変えてみてください
初めは、吠えないことがほとんどだと思います
(それでも吠える子は、実際の場面では相当に興奮していると想像できますので、お近くの正の強化を使うトレーナーさんにご相談してくださいね)
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