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『ことりのレストラン④』

「当日は、どうやってスピンドンさんをここまで連れてくるのさ」
お店が終わると、毎日のように小鳥の兄弟たちは頭を突き合わせて相談です。
まったくいいアイデアが出ない中、時間だけが過ぎていきます。
すると、普段無口で玉ねぎばかり剥いている九男のペーペチが
こんなことを言いました。
「スピンドンさんはインテリアデザイナーだよね。だから、レストランを
リニューアルするアイデアを欲しいって、聞いてみるのは?」
一瞬、部屋が深海になったように静まり返りました。
「あ、だめだよね。やっぱり」
兄弟たちは顔を見合わせ、目を見開きました。
「ペーペチ、いいねえー!」
「すごいや、ペーペチ。えらいぞ」
思わず大きな声でさえずりながら、兄弟たちは代わる代わる
九男の翼を閉じたり広げたりしてほめてあげました。

外は薄ピンク色の桜が満開です。
ということは、この花びらがすべて散ってしまったら、
翌日にはスピンドンさんがこの森から引っ越してしまうということなのです。
「今朝の週間天気予報で、どうやら週末に強風注意報がでているらしいんだよ」
兄弟たちは慌てました。
なぜなら、風が強く吹けば予定よりも早くパーティーを開かなくては
ならないからです。
「明日、明後日のうちには開かないと、このままじゃ全てのお別れパーティー
計画がおじゃんになってしまうよ」
食事の準備はことりの兄弟たちがしているのはもちろんのこと、
花の準備は鹿さんたちが、贈る言葉はフクロウ爺さん、
音楽隊はウサギとリスのみんなが練習していて、
余興はタヌキとキツネの変身芸です。
おまけに熊さんが、歌声を披露したいと言い出したのです。
「スケジュールかつかつだな。みんなに、急ぐように言わないとね。
それからペーペチ、スピンドンさんに大至急お店のリニューアル改装のこと伝えておいて」


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