本当に欲しかったもの(2016年8月17日)

2016年に電撃結婚するとツイッターで公表してしまった私。

気付くと8月に入っており、そろそろ出会う気配すらない毎日に焦り始める。

8月はこれで最後にしようと思って8月最初の週にお見合いパーティに行く予約を入れた。

その晩、夢を見た。犬にキスされる夢だ。その犬は人間みたいに大きな犬で、犬臭かった。

「なあ、きの、キスしてくれよ」

とその犬は言って、自分からキスしてきたのである。

夢占いで調べると、それは異性の現れる暗示で、犬臭かったことは、相手を疎ましく思うくらいの強い感情を示されることと書いてあった。

ひょっとしたら今度の恋愛はすごいベッタベタする人とすることになるのかもしれない。

そんな乙女チックな予感を抱いていた反面、もう8月に恋人は現れないと心のどこかでは諦めきっていたのであった。

ところが、8月最後のパーティでひょっこりと出会った彼はまるで予定調和のように、私と相性がバッチリ合った。

その犬のような人物は、数回デートした後に

「なあ、キスしてくれよ」

と言って、自分からキスしてきたのであった。予知夢を見たのだろう。

私たちはそれからの数日間は無人島に届いた救援物資のようにお互いを求めあった。

長年満たされることなく木枯らしに晒された心の器は恐ろしいくらいに渇いていて、十代の頃のように周りが見えなくなってしまうような時間が一瞬訪れたのである。

ところがどっこい。

どっこいって一体なんだよ。って言いたくなるくらいにあっさりと。

私の中に結婚する欲望みたいなものがなくなってしまったのである。

これには私も自分で呆然としてしまった。

別に結婚しなくていいんじゃないかとさえ思った。ずっと欲しかったものは手に入れてみると別のものだということはよくあると思う。

結婚という形にはめられた途端に窮屈な関係になりそうな気がした。せっかく自分にぴったり合うものを見つけたら既製品で済まなくなったという感じだろうか。

今まで飢え過ぎて見えなかったけれど、自分が本当にほしかったものがこれからやっと見えてくるような気がしている。