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炭窯見学

今日は、中学時代の友達と会った。
ちょっとお茶しようとしたら、どこも店があいてない。さすが過疎の町No.1。😅

私らはお互いに病んでるちゃんなので、脳のために少し散歩をした。歩くことは脳にとてもよいから、歩きながら懐かしい話に花が咲いて、それでも、歩いて行くところがなく、友達の実家が炭窯をやっているというので、頼み込んで結局車で連れて行ってもらった。

この炭窯、7年前にも行ったことがあったけど、今度行ったときには、新しい代を継ぐ息子さんがいた。

このご時世、事業継承問題で、軒並み老舗が潰れていくなかで、新しい目標に燃える美しい青年を見るだけでも、時代に磨耗仕切った四十路ごえのおばちゃんである私には眩しい光に見えた。

それで、つい昔の編集者時代の血が騒ぎ、現在の炭窯主さんにお話を聞かせてもらったが、YouTubeやら公に名前が出るのは嫌で、ひっそりと続けていきたいという意思を汲んで、どこの場所かわからないよう、人の映りこみもわからないように撮影した。

私はズバリ、息子さんが仕事を継ぐことへ親としてどう捉えているか聴いてみた。今は2人でやっていくなかで、いつかは息子さんが自分一人で全部やらなくてはならない。

過疎の進む町で、仕事を継ごうという息子に対してどんな気持ちなのだろうか?

父親としては素直に自分の跡を継いでもらえるのは嬉しい。

ただ、簡単な道のりではないから、ゆっくりでもいい。道筋をつけてやりたい。26年の言葉の重みがそこにはあった。

そう言っている瞳には、父親として、炭窯という絶え間ない繰り返しの中で生き抜いてきた男としての、優しさが溢れていた。

慣れれば誰でもできる仕事。

と、言っていたが、過疎化してまわりにも何軒か昔あった炭窯は皆潰れている。

続けていくことの難しさ、利益率の低さを考えたら、よほど他によい仕事はあると思う。

その中で、何代も継続するには、この仕事ならではの良さを伝えていく力がなければならない。

山から木を切り落とし、ちょうどよい大きさに切ってトラックで運びだすだけでも半日以上かかる、炭窯は夜通し火を入れて、明け方焼きあがる。

年々キツくなる仕事だろうに、働くのが楽しそうな主さんの姿を見ていると、好きだから続けてこられたし、お父さんが仕事を好きで楽しそうにしてるものだから息子さんも興味を持ったんだろうなと思う。

事業継承とか、そんな言葉には全然当てはまらない。父親が大好きなものを知りたい息子が、気づいたら自分も同じ道を歩んでいたというおとぎ話のような世界だ。

炭窯というより、これはお父さんと息子の秘密基地なんだ。だから、表の世界には出したらいけないんだな。

私は、ほっこりした気持ちになって家に帰った。

炭の香りのついたコートをすーはーすーはー嗅いで今も余韻を楽しんでいる。今日はとても幸せな気持ちで眠れそうだ。