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木蓮の涙

昔、母は不倫をしていたんですね。

でも、私たち娘からすると、身体障碍者となってなお、杖を振り回して母にDVを加える父に比べたら数倍マシな男だったので、見て見ぬふりをしていたわけですよ。

 そしたら、海の事故で母の不倫相手は死んでしまったのです。

ソノ フリンアイテ ガ ワタシニ キイタ スキナハナ ガ モクレン

で、とある場所にその人が植えてくれて今も毎年咲いているんです。

その花が咲くたびに、叶わなかった母の恋に胸が痛みますし、スターダストレビューの「木蓮の涙」が深く胸に染みわたります。

毎年、その場所に咲くモクレンを探しに行く母が切なすぎて胸がきゅんとなります。

夜明けに初めて2人で見た野生の鹿の美しさとか、もうそりゃ、失楽園も真っ青の純愛中年恋愛話です。

なのに、母は死体の第一発見者として、かつ、第一容疑者として

パトカーに乗っている時に電話が私と繋がりました。その時の母の声の何とも言えない絶望感は言葉に表現できません。

すごかったのは其の後です。

不倫相手の娘に対して、本妻の娘らは「父がそうしたかったのだから、返済無用」とキッパリと私らとの援助関係を肯定して去りました。

母の不倫相手は、まるで私の父親のように私が20歳の時に記念に父親のように手紙をくれていました。

何回読んでも泣いてしまいます。

私たちの家族は機能不全家族でした。その中で、父親のように援助をしてくれたその人は母への愛よりも以上に、私たち家族全員を支えようとしてくれていました。

きのちゃんは、見た目と違ってすごく繊細な言葉の持ち主だから子供向けの童話作家になりなさい。

って何度も言ってました。

この人以上に、私を理解をしてくれる人が現れなくて、母が恋に落ちてしまったのもわかるなと思ってしまいました。

一生でただ一つの恋が実らなかったとしても、

愛することができた母は女として幸せだったと思っています。

いつか私もそんな人に出会うことができるでしょうか?