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【本】きみの鳥はうたえる

きみの鳥はうたえる (河出文庫

佐藤泰志 

本屋でアルバイトをしてギリギリの生計を立てる主人公と、同じバイト先の女の子と、無職だけど気の合う友人による、ひと夏の少しほろ苦い話。ちなみに全員が二十一歳。

何もやりたくない瞬間は、誰にでも訪れる。「みんな真面目だなぁ」と思いつつ、真面目なふりをして仕方なく働いている人は多いんじゃないだろうか。この本の主人公と友人は。そんな真面目な社会に真っ向から反抗して、好き勝手に生きる。

もう決して自分が送ることはできないけど、失われた二十一歳という時間を振り返りつつ、「こういう生き方もできたんだな、人間って」とみずみずしい気持ちにさせてくれる一冊。

余談だが、作者は短い命を麦畑での自死というかたちで終えており、どこかゴッホを彷彿とさせる、美しくも悲しい物語。

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