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中小企業省力化補助金はなぜ使われない?|中小企業診断士

皆さん、こんにちは!ようしゅう|中小企業診断士です。

ここ数年の間、ものづくり補助金→事業再構築補助金→小規模事業者持続化補助金のループで絶え間なく事業計画書を策定してきましたが、今年度から予算編成が変更になってしまったことで、今は補助金が落ち着いている状況です。

おそらく10月~11月には事業再構築補助金の公募が再開するのではないかと予測しており、私的には嵐の前の静けさという状態です。

では「中小企業にとっては使える補助金がなくなってしまったのか?」というと、そういうわけでもありません。
 

その筆頭格が「中小企業省力化投資補助金」になります。
 

国が巨額な予算を付け〝省力化に繋がる製品をカタログから選ぶだけで最大1,500万円の補助金が貰える〟という補助制度。

そんな政府肝入りの「誰でも簡単に使えるはずの補助金」が、実は全く使われていないらしいです。
 

本日はその理由について解説(考察)します。


中小企業省力化投資補助金とは

令和5年度補正予算(第1号)では「中小企業省力化投資補助事業」に1,000億円の予算が盛り込まれていました。さらには事業再構築補助金の予算を再編し、既存基金を活用することで総額5,000億円規模とも言われています。

公募期間は令和8年9月末までとされており、2年半の間で15回程度の公募回数(約2ヶ月に1回ペース)で随時公募される予定です。

中小企業省力化投資補助金とは、「人手不足解消に効果があるロボットやIoT等の製品を導入するための経費を国が補助することにより、簡易で即効性がある中小企業の省力化投資を促進し、売上拡大や生産性向上を図るとともに賃上げにつなげることを目的とした補助金です。


対象製品をカタログ(リスト)から選んで導入し、販売事業者と共同で申請を行います。
 
カタログには現在25種類のカテゴリ、159製品が登録されており、比較的幅広い業種が使えるように随時カタログも拡充・更新されています。

また、「中小企業省力化投資補助金」の補助率は2分の1で従業員数に応じて補助上限額が変動します。更に補助事業実施期間中に一定以上の賃上げを達成した場合には、補助上限額が引き上げられ、最大1,500万円まで補助金が受給できることになります。

仮に3,000万円の機械設備が半額の1,500万円で導入できるとすれば、中小企業にとってはかなり助けになりますよね。

申請から事業完了までの流れも簡単で5ステップで申請できます。

①補助金の理解
②gBizIDアカウントを取得
③製品カタログから導入する製品を選ぶ
④販売事業者(共同申請者)を選ぶ
⑤販売事業者とともに申請する(販売事業者が申請をサポート)


基本的には、選んだ販売事業者が申請をサポートしてくれますので、かなり中小企業に寄り添った簡単なフローになっていると思います。
 
 

省力化補助金が全然使われていない???

2024年9月27日発売のニッキン(日本金融通信社が発行する金融系新聞)に、デカデカと書かれた「省力化補助金 テコ入れ 制度見直し利便性高める」という文字が載っていました。

その記事を要約すると「中企庁はこの補助金が全然使われていないから、補助対象の拡大や要件緩和などを通じて、利便性向上に向けた制度設計の見直しを図る。そのために、中小企業や支援機関を対象とした説明会を全国で開催して認知度を上げていく。」とのことでした。

更には購入だけでなく、リースも対象にしたり、申請回数の上限も1回だけでなく複数回までOKにしたりとなんとか確保した予算を消化して、日本の生産性を上げようという姿勢が窺えます。
 

 

公式ホームページでは実際に10月~12月にかけて全国47都道府県でセミナー予定が公開されており、「ホントにやるんだ~」というのが本音ではあります。
 
 
 

省力化補助金が浸透しない理由(考察)

事業再構築補助金やものづくり補助金などは事前にみっちりとヒアリングした上で、四苦八苦して事業計画書を作って、ようやく採択されるかどうか…それも最近は2~3割の採択率。

それに比べて、省力化補助金はカタログから製品を選んで、しかも販売事業者のサポート付きという超シンプル補助金が、なぜここまで使われていないのでしょうか???
 

私はその要因は2つあると思います。
 

①補助金を支援する側の意識

支援する側とは補助金を申請する中小企業ではなく、申請をサポートする金融機関や民間コンサル、中小企業診断士等の認定支援機関を指します。

ここ数年で事業再構築補助金やものづくり補助金などの補助金ビジネスが一気に広がったことで、市場に参入するプレイヤーも大幅に増えました

特にそれまでは中小企業診断士というのは「取っても食えない資格」と揶揄されていたこともあり、多くの中小企業診断士が補助金を生業することで次々と申請数が増えていきました。

お金を取ることに賛否はあれど、参入するプレイヤーが増えるということは競争の原理が働くため、結果的には品質も向上していきます。

しかし、省力化補助金は登録した販売事業者が申請をサポートする形式を取っているため、認定支援機関は「補助金を案内するだけ」になってしまいます。

プレイヤーが増えず、競争原理も働かず、結果的に認知度が低い補助金になってしまいました。
 
 
 

②肝心なところがブラックボックス化

販売事業者が申請をサポートするということは、実際にどのような内容で申請しているのか認定支援機関には分かりません。

申請事業者と近い距離にあるはずの認定支援機関が詳細までを把握できないとなると、支援者が中小企業に情報提供する際の粒度も大きくなってしまいます。

つまりは「業務効率化に繋がる省力化補助金っていうのがあります。詳細はホームページを見てください」というところで情報提供が止まってしまうため、中小企業も不安、支援者側も不安な状況に陥っています。
 

すると、だんだんとその話自体をしなくなってしまうのです。
 

国が対策として「認知度を上げるために全国で説明会を行います」といって、中小企業に対して説明会を行ったところで、そもそもそれに興味のあるヒト、理解できるヒトは限られているでしょう。

それよりもブラックボックス化の原因になっている制度を改変し、支援機関が参入できる余白を作った方が遥かに浸透し、マーケットが拡大していくと思います。
 
 
 

中小企業にとって支援機関が果たす役割

補助金はビジネスになった一方、有料化するということは〝責任が伴う〟ということです。責任が伴うということは、制度をよく理解しようとするし、説明もしっかり行うようになります。

そうした支援機関は中小企業にとっては非常に頼りになる存在であり、だからこそお金を払うに値するものです。

補助金の公募要領なんかを見ると国は「無料」を勧める傾向がありますが、それこそがプレイヤー不参入や競争原理の妨げになっていることを理解しする必要があるのではないかと思っています。

そこを無視して、全国で説明会を行ったところで、そもそもマーケットの母数が増えないためあまり効果は見込めない。。

政府肝入りの省力化補助金が果たして今後どうなっていくのか、その行方をこっそりと見守りたいと思います。
 
それではまた!!
 
 

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