メロンとの遭遇

深夜0時を回っていた、と思う。
倒れるようにして家に上がり、背負っていたリュックを下ろす。ドサッと鈍い音がした。

めちゃくちゃ疲れた。遊びまわっていたから自業自得なんだけど。眠いよ。
いくら明日休みとはいえ、早めに寝なきゃ...と思った私の目にこじんまりした冷蔵庫が留まった。

そうだ、メロン食べたい...果物だし、夜中食べても太らないでしょ。
おもむろに扉を開ける。鎮座する頂き物のメロン1玉。神々しいねぇ、君。

包丁を取り出し、まな板にメロンを転がす。
そこで、気がついた。私、剥き方知らない。
人生でメロン、剥いたことないわ。なんなら毎回カットメロンだわ。200円前後のやつ。

「庶民だなぁ...」
まな板の上で大きなメロンがニヤッと笑った。気がした。くそ。メロンなんかに負けてたまるか。

「OK、Google。メロンの剥き方!」

なんとか剥き方は分かった。
切れ味の悪い包丁をひと想いにメロンの腹へ差し込む。特に抵抗はされず、スッと真っ二つになった。見た目より柔らかい。
どうだ!!と叫ぶが当然返事はない。メロンは息絶えたようだ。

静かになったメロンに手を合わせ、ヘタをとる。
「種は、スプーンでとりましょう、か...」
スマホの画面をチラッと確認してから、スプーンを取り出して果実に差し込む...
...種が逃げる。
取っても取ってもツルツルと逃げていくし、なんかどんどん食べられるとこ減ってません???ねぇ??
泣く泣く種は指で捕まえることにする。
手がベタベタになっていく。

深夜、20歳超えた女がメロン相手に1人悪戦苦闘してる。冷静に考えるとなんか滑稽だ。

ようやく全ての種を取り終えて、メロンを8等分にする。よく熟れていて、美味しそう。
皮を剥いていくと、果汁が肘まで滴った。
あーもう食べたい。

お行儀は悪いけど、幸い叱るような人はここにいないし(なんなら私以外人がいないし)。いただきます!!

1/8メロンにかぶりつく。めちゃくちゃ甘い。果汁がどんどん溢れてきて、ジュース飲んでるみたいだ。
こんなに美味しいものが子供の頃苦手だったなんて、わたし人生損してる...とひとりごちる。

夏と呼ぶにはまだ寒すぎる7月末、でも確かに夏は来たんだなぁ、と思った。



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