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自由

少し前、ある用事で1週間ほどホテルで滞在した。
そのときのことを思い出すと、胸がツンとして、ちょっと泣きたくなる。

なんでだろう、そんな思い入れのある町でもなかったし、
用事自体も特に心を揺るがすようなことでもなかった。
最初は不思議だった。

でも今ならわかる。
私はあの1週間、ほとんど自由だった。
ホテルの綺麗な部屋で、誰からも干渉されず、好きなように過ごすことができる1週間。
用事はこなさなきゃいけないけど、
あの部屋には(備え付けのもの以外は)私のものしかなくて、どこにどう置くのかも自分で決められる。
自由だ、と思った。

家族を思い出すものは何もない部屋。
ホテルの部屋には予約した人以外立ち入り禁止だから、突然の来訪もないし、
近くには知り合いもいないから誰かと会う予定もない。
遠く離れた恋人のこと、もいい意味で全く気にならない。
窓の外に見える街、そこを歩く人たちは私のことを知らない人ばかり。
1人でも、全然寂しくなかった。
ここは私だけの世界だ、そう思った。

たぶん、そういう自由に私は触れたことがなかった。
完全とは言えないけど、今まで触れたことのない自由がそこにはあって、
それがとても心地よくて、その時間に戻りたくて、
だから私の胸の奥はツンとする。

社会に出てお金を貯めたら、1人だけの家に住もうと思う。
家族にも恋人にも縛られない、1人の世界を作り上げることが
今の私には必要なんだと思う。

そういうところに身を置いてこそ、
わかる自分の姿ってきっとあると思うから。