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「感覚で描くのではなくて、理論的に描く」 | カカリアスタジオ スタッフアドベントカレンダー2021 - Day.1

この記事は「Happy Elements カカリアスタジオ スタッフアドベントカレンダー2021」の1日目の記事です。

今回のアドベントカレンダーでは、Happy Elements カカリアスタジオのスタッフに『カカリアスタジオの仕事』をテーマにインタビューを行っています。様々な職種のスタッフが、どんな仕事を担当したのか、普段どのような考え方でモノづくりをしているのかをご紹介します。

2021年のアドベントカレンダーの1日目は『あんさんぶるスターズ!!』チームの背景イラストレーター、M.Mさんにお話をうかがいました!

【略歴紹介M.M/イラストレーター。アニメの制作会社を経て、Happy Elements株式会社に入社。『あんさんぶるスターズ!!』で主に背景を担当するイラストレーターとして活躍中。

「自分が今まで身につけてきたスキルを活かして働きたい」

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ー M.Mさんは『あんさんぶるスターズ!!(以下 あんスタ!!)』の背景イラストを担当されています。まずはHappy Elements株式会社に入社された経緯をお聞きしてもいいですか?

前職はアニメの制作会社で働いていました。美大を卒業して新卒で入社した会社で、主にアニメの背景を描いていましたね。
そこでは数年間働いていたんですが、アシスタント的な仕事が多くて、あまり『自分で絵を描いている』という感覚がありませんでした。労働環境などもあまり私にマッチしていなかったのもあって、近しい業界での転職を考えていました。


ー なるほど、それで弊社に応募されたんですね。転職の際はゲーム業界に絞って検討されたんでしょうか?

そうですね。自分が今まで身につけてきたスキルを活かして働きたいと考えていたので、自然とゲーム業界になりました。あまり他は考えてなかったですね……アニメ業界からゲーム業界は比較的よくあるルートかもしれません。今で入社してから2年ちょっとになります。


ー 転職時には東京から京都へ引っ越しされてきたということですが、そこに対して不安などはありませんでしたか?

あまりそこに不安は感じなかったですね。元々自分自身が地方出身というのもあり、東京で働いていたことがイレギュラーというか……『東京を脱出した!』という感じでしたね(笑)
それに、カカリアスタジオでは会社から引っ越しの支援をしていただけたのもありがたかったです。

ー 入社後のことをお聞きしたいと思います。M.Mさんは入社からずっと『あんスタ!!』チームに所属されていますが、入ってすぐに背景の制作を担当するようになったんですか?

はい。入社当時はちょうど『あんスタ!! Music』のリリース前だったので、そのタイミングで背景チームに所属しました。現在の背景チームは5人ぐらいですね。

ー 以前はアニメの背景の制作を担当されていたということですが、「ゲームの背景」の制作について違いを感じたりはありましたか?

ありましたね。
もちろん「背景を描く」という仕事は、アニメとゲームの背景制作で共通する部分もありますが、大きく見ると全然違います。

アニメの世界ではいわゆる『美術監督』という全ての美術設定などを担当される方がいて、その方が1から設定を考えます。
例えば『町並みを描く』となった場合、まず美術監督が「ここはこういう建物があって、道路はこんな感じで……」という風に設定を考えます。それを元に、他のスタッフがシーンに合わせたパースやシチュエーション違いの背景を描く……という感じですね。

対して、『あんスタ!!』の背景は「各イラストレーターにおまかせ」という感じです。
なので、制作時に自分で設定を1から考えていいと言われて、「えっ!?」という感じでした。
前職ではそういった仕事は一度もしたことがなかったので……しかも初日からそれで。かなり戸惑いましたね(笑)
もちろん他のゲームの現場ではまた少し違うのかもしれませんが……。

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もし今アニメ業界に勤められているかたで、「自分で1から背景設定を考えたい」と思われている方は『あんスタ!!』チームにくると楽しいかもしれません。 アニメ業界だと『自分で世界を作る』という仕事はキャリアを長く積まないとなかなか任されないので、そこに憧れがある方も多いと思いますし。

「どの角度でも画面映えすることを意識しています」

ー 『あんスタ!!』の場合は、これまで6年近く(2021年現在)続いてきたものがあって、背景などの設定も既にたくさんあると思うんですが、それでもまだ新しく設定を考えることは多いんでしょうか?

はい。『!』から『!!』になって舞台が広がりましたしね。

まず『ESビル*』が建ったので、そのビルの1部屋ごとの設定を考える必要があったりしました。
その部屋を1つ描くだけでも……例えば通気孔の位置であったり、壁と床の接地する部分(巾木)はどうだとか、照明器具の大きさとか……。そういった細かい部分はこれまで考えたことがなくて、何気なく壁と床を描くだけじゃないんだなと感じましたね。

▼ESビル
作中での中心的な舞台となるオフィスビル。各アイドルの所属する事務所が入っている。


ー ちなみに『背景イラスト』と一口に言っても、『ストーリー中に登場する背景(以下 ストーリー背景)』『スチルイラストの背景(以下 スチル背景)』とでは印象が違うように思うのですが、実際に担当されるかたは別だったりするのでしょうか?

私の場合はどちらも担当していますね。

『ストーリー背景』は、先程も出てきた町並みや、アイドルがライブを行うステージなどです。
そちらの設定を元にして『スチル背景』が後から描かれることが多いので、制作時点では どの角度でも画面映えする ということを意識しています。例えば空間に小物を多めに配置したりなどですね。ライブステージの場合はMV制作が先行していて、既にデザインがあることも多いですね。

それに対して 『スチル背景』の場合は「このシチュエーションなら空間のどこを使うと映えるかな」ということを考えます。
これは、シナリオやシチュエーションから場所が指定されていることも多いですが、こちらにおまかせされることもあります。

「このシチュエーションならこのソファに座らせよう」とかは背景担当とイラスト担当が相談して決めたり……。
あ、なので後から「ソファに座らせたい」となどができるように『ストーリー背景』の設定を決める時点でちゃんとソファを部屋に置いておかないといけません(笑)
そういう理由でシナリオの方から「この空間には必ず座れる場所を作っておいてください」と依頼をいただくこともありますね。

例えばアイドルたちの生活する寮室のシーンですと、こういった見取り図を元にしたシチュエーションの指示書があって、この部屋のどこにいるかはイラストレーターにおまかせで!という感じです。

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ー 見取り図は面白いですね。この見取り図の詳細部分、 ーー例えば部屋の雰囲気であったり、それこそ小物1つなどは、全部背景イラストレーターが考える という感じですか?

そうですね、『あんスタ!!』をプレイされている方には女性のユーザーさんが多いですし、部屋の小物1つとってもセンスが求められます……(笑) 日頃から海外のオシャレな部屋の写真などを見て研究していたりします。

先程の見取り図はアイドルたち個々の寮室なんですが、この各部屋にそれぞれの個性があるベットを考えないといけなくて……。何十人分のベッドのデザインを何人かで分担して担当していたんですが、かなり大変でしたね……。
「チェック柄にしたいけど、この雰囲気はこの子が既に使ってるしな〜」など……(苦笑)

インテリアなどはそれぞれの個性に合わせてコーディネートを考える必要があるので大変ですが、こういうことを考えるのが好きな方にはとても楽しいと思います。

ー 最近で担当されたもので印象に残っているものなどはありますか?

最近ですと、2021年の初め頃に出た 『骨董市』 の背景ですね。

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入社当初は簡素な部屋1つの設定を作るのにもあたふたしていたのですが、この頃になると情報の集め方・扱い方や季節感の出し方など細部にこだわることが出来るようになってきたと感じています。

短い時間の中でこだわりを出すのに苦心していますが、自分でも入社当初と比べて表現力が上がった実感はありますね。

実は『あんスタ!!』の背景チームは、業界の他の会社と比べても背景1枚あたりの制作時間が半分ぐらいらしいんですよ。私も入社当初は「本当にこのスケジュールで制作してるんですか?」と思ったくらいで……(苦笑)

でもそれも決して無茶なスケジュールを組んでいるわけではなくて……元々弊社にいらっしゃった背景イラストレーターの方がとてもスキルが高くて、当たり前のようにその時間で制作できてしまうからなんですよね。なので私もそれについていこうと頑張っています(笑)


ー まさに背景チームは職人集団という感じですよね……(笑) 他にも『スチル背景』の方で印象に残っている仕事はありますか?

あります!実はここ数ヶ月で★5カードのスチル背景も担当させていただけるようになったんです。

最近のイベントでいうと 「悠久の鬼◆スカーレットハロウィン」の敬人の才能開花後 や、「深層*裏腹に潜んだBeast」のアドニスの才能開花後の背景を担当させていただきました。

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これまでも★4カードの背景を担当することはあったんですが、それと比較してもやはり★5カードはパース感がさらに複雑で繊細ですし、色味の調整指示もかなり細かいです。

そのアイドルの★5カードを楽しみに待っていただいているユーザーさんのことを思うと 「不十分なものは作れない、頑張って良いものを作らないと!」と必死です。
でも単純に楽しくもあります。構図がダイナミックで綺麗ですし、何よりアイドル自身のイラストがものすごく良いので、背景を描く私まで上手くなった気になれます。最後にイラストが完成した時の「おお〜」という感じはたまらないですね(笑)

先程挙げたアドニスのイラストでは、水しぶきの表現を頑張ったので見ていただけると!ちょっとアドニス自身の「男」感が強くて目立っていないかもしれませんが……(笑)

『あんスタ!!』で初めてカード背景を担当したときには、1枚の絵をとてもこだわって作っていることに衝撃を受けました!
パース・色・もののスケール等に何度も修正をいただきます。2年経った今でもです。

一瞬しか映らないことが多いアニメだと、場面ごとの物の合わせなどはスケジュール的にスルーしても仕方ない……みたいなところがあったのですが「さすがゲームのイラストは1枚を長く見られるから妥協がない!!」と感じました。驚くとともに、一応前職でも背景を描いていたのに自分の無力さを感じます。


ー ちなみに、チームの他のイラストレーターさんからは「アリアドネのHiMERUの背景が好き」というコメントをいただいています。

牛ですね(笑)

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実は牛は初めて描いたんですが、最初にアートディレクターの方から「ここに大群の牛を描いてください」という指示をいただきまして……。あ、ちなみに一緒に写っている桜河こはく君は背景ではなく、キャラクターイラスト担当の方で描いています。

『あんスタ!!』ではイラストはセクションごとに分業していて、基本的に背景とキャラは別々のイラストレーターが担当します。ただ、この牛だったり、あとはアイドルが接している机や椅子などは、イラストによってどちらが描くかを都度相談して決めています。


ー 先程★5カードのイラストはパースが複雑とおっしゃられてましたが、やはり絵として「難しい」もののほうが楽しかったりするんですか?

そうとも限りません(笑)
パースが急になってくると臨場感はでてくるんですが、その分調整がシビアになります。なので、指示や修正のフィードバックも細かくいただくことがあります。

チェックは背景の先輩にしていただくんですが、かなり細かい部分まで見ていただけますし、ほぼ毎回1度は何かしらの指摘がありますね……。

私、実は同じ間違いをしないように、入社してから指摘されたことや実際のイラストに赤入れいただいたコメントをカテゴリ分けして全てアーカイブしてるんです。 『アイレベルの確認方法』とか『画面に2人以上人物がいるときの注意点』とか……。
この会社に入ってから、イラスト1つにしても注意点がたくさんあって、でもクオリティを上げていく上ではそれを毎回ちゃんと確認しないとダメだなと思うようになりました。

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「感覚で描くのではなくて、ちゃんと理論的に描く」

ー M.Mさんが背景イラストを描く上で大事にされていることや意識されていることはありますか?

先程と近いですが、やはり「そのアイドルのイラストを楽しみにされている方のために良いものを描く」が一番にあります。

また、アイドル自身の個性であったり、シチュエーションや感情を背景の色味や光源でも適切に表現できるように考えていますね。

先輩に指摘をいただく中で、それらを感覚で描くのではなくて、ちゃんと理論的に描くのが大事というのを学びました。

例えば「今回のシチュエーションはこういうもので、こういう理由で反射光はピンク系の色になります」といった風に説明いただけるので、それを参考に自分でも論理建てて描くことが多くなりました。
これは『!』のころから先輩方が積み上げられてきたものがとても大きいと感じています。

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ー とても真面目な方が多い印象ですよね。そんな『あんスタ!!』の背景イラストレーターにはどういう方が向いていると思いますか。

イラスト以外の知識が豊富な方が良いと思います。
背景を描くにあたっては建築の知識であったり、世の中にあるものの大体の大きさや人との対比が分かっていたり、自然の植生であったり……挙げるとキリが無いんですが、情景を描くにあたって広い知識を身に着けているといいかなと。

……と言っても、私もまだどうすれば体系的にそこを身に着けられるかは分かっていないんですが。
チームでは普段からの「観察」を大事にするのが良いのではと話していますね。例えば街を歩いていて「電柱の高さってどれくらいかな」と考えてみるとか。

あとは今『真面目』という感想をいただきましたが、まさにそういうかたが向いていると思います。

ー では最後に、カカリアスタジオの背景のお仕事に興味を持たれている方に向けて、メッセージをお願いします。

私がカカリアスタジオに入って感じたのは「自由さ」でした。
フレックス制で就業時間も自由がききますし、良いものが作れたら、コアタイムが終わって早く帰ってもいいですし。
フリードリンク制度や綺麗なオフィスなど、クリエイターファースト感を感じますし、居心地のいい環境を求めているクリエイターの方にもオススメです。

キャラを描く方、MVを作っている方、ウキスタ等の動画を作る方など、いろいろな仕事を担当されている方が一緒のオフィスに居ることも貴重なのではないかと思いますし、それぞれのプロから話を聞けるのでおもしろいです!

あとは社内のメンバーに若いかたが多いです。年齢や感覚が近い人が多いと業務が円滑に進むというのは入社するまで意識したことがなかったので、そこは驚きでした。変な上下関係や気の使い合いもないので働きやすいです。そういった働き方を求めている方、オススメです。

(ー M.Mさんありがとうございました!)

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