資本主義とミニマリズム

近所のサンドウィッチ屋さんの壁になかなか薀蓄のあるアネクドートが貼ってあった。記憶を頼りに書くとこんな話だ。

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ある投資家が海辺にいると、ひとりの漁師が乗った小さな漁船が沖から戻ってきた。漁船には立派な魚が何匹か積まれていた。投資家は漁師の釣った魚を誉めたあと漁師にこう尋ねた。
「これだけの魚を釣るのにどれくらい時間がかかるんだい?」
「たいした時間はかからないよ」
投資家は、それならもっと時間をかけてたくさん魚を釣ったらいいのに、そうしたらもう1隻漁船も買える、そうすればもっとたくさん魚を釣れるからもっとたくさん船を増やせばいい、缶詰の会社を作ることもできるかもしれない、といった。漁師はいった。わたしは毎日子供と遊んだり、家族と昼寝したり、夜は村で友だちとお酒を飲んでギターや歌で騒ぐのに忙しいんだ。そんなことをやっている時間はないよ。
「缶詰の会社をつくったあとどうする?」
「その会社を大きくしてマーケットに売るんだ。ミリオネアになれるぞ」
「それで?」
「そうしたらやっと引退できる。引退したらきみは毎日子供と遊んだり、家族と昼寝したり、夜は村で友だちとお酒を飲んでギターや歌で騒ぐことができるんだ!」
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必要充分なことだけやって残りの資源を使ってのんびり暮らす。現実はそんなミニマリズムはなかなかうまくいかないけれど、何のために生きるのか、何のために働くのか、ということは考えちゃうね。もしお金を儲けたあとやりたいことがお金を儲けるまえにやっていたことだとしたら、お金儲けする暇なんてほんとうはないのかもしれなかった。ちなみに紹介した小噺の投資家はアメリカ人で漁師はメキシコ人、という設定でした。資本主義の論理に則って動く経済大国アメリカと資本主義では勝ち組になれなくてもお金で表現されない豊かさを享受しているかもしれないメキシコ。どっちがいいのかなんて簡単にはいえない。それはそれとして。アメリカのサンドウィッチはほんとうに美味しい。美味しくないお店も多いけれど、美味しい店はほんとうに具材も豊富で、とくにハムとかパストラミが美味しい。

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