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子どもは大きくなる。そのときを考えて取得した資格が、今も社会と自分をつなげてくれている。

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「これからどうしよう?」と迷ったとき何かのヒントを見つけてもらえればという思いで【L100】自分たちラボが紹介してきた「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソード。

今回は、二人のお子さんの子育て最中に、資格を取得し、今もその資格を活かした仕事を続けている、るり子さん(仮名)のエピソードです。将来をどのようにとらえていたのか、また現在の思いは?

るり子さん(60代前半)
経歴: 大卒後、数年の会社勤めの後、結婚退職・出産。子どもが幼稚園のときに、消費生活アドバイザーの資格をとり、再就職。現在も相談員としての仕事をしている。娘さん二人はそれぞれ結婚し、現在は夫と二人暮らし。

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
特に大きな出来事もなく、割と淡々を過ごしてきたかなと思います。どん底のような時期はなく、平穏無事に過ごしてきた印象です。
結婚してすぐ子どもができたので、そこからは大変でした。30~40代は、今思ってもよくやったなと思います。当時夫の仕事がすごく忙しくて、今で言うワンオペ育児状態だったんですよ。体力的、精神的にきつかったですね。実家が近かったので、手助けはしてもらったんですけど、それがなかったらもっと大変でした。
人生曲線は、自分の自由度、体力的・精神的キツさを考えて書いてみました。

若かったのですんなり結婚

20代:結婚・出産

―――最初のターニングポイントとしては?
結婚で生活が大きく変わりました。25歳直前に結婚したんですけど、若かったから、あれこれ考えずにすんなりと。30代だったらもっといろいろ考えていたかもしれません。勤めていた会社では、結婚したら退職するのが当たり前という感じだったので、結婚と同時に勤めは辞めました。結婚してすぐ子供ができて、一人目を26歳、二人目を29歳で出産しました。夫は深夜以降に帰宅する状態だったので、本当に大変で、あの時は人生で最高に痩せていました。

資格をとって後々活かせたらと思って勉強

30代:資格取得と再就職

―――その後、お子さんが小さいうちに資格をとったんですね?
娘が二人とも幼稚園に入ると、育児が少し落ち着いて、それで自分の将来のことを考えて、以前から興味のあった消費生活アドバイザーの資格を取ろうと思ったんです。まだ大変な時期ではありましたけど、スタートは早い方がよいと思ってがんばりました。子供はいつか大きくなるし、その時に自分が何も仕事しないで社会ともかかわっていないでというのは嫌だな、という思いがあったので。すぐに就職しなくても、資格をとって後々活かせたらと「とっかかり」として考えました。結果的に、実家を2世帯住宅にして隣に引っ越したのと、子どもが小学校にあがるのと、資格取得のタイミングが重なって、資格取得からブランクなく雇ってもらえました。

―――消費生活アドバイザーに興味を持ったのは、何かきっかけがあったのですか?
新聞か雑誌で見て、「企業と消費者の橋渡し」というキャッチフレーズに興味が湧いて。あと自分の役にもたつかなと。

―――再就職について、周りのご家族はどんな反応でしたか?
夫は「いいんじゃない」という感じ。2世帯住宅になったことで、母に幼稚園の送り迎えをしてもらえて、周りが協力的だったのが助かりました。
再就職して、子どもが小学校に入ったら入ったで、PTAや習い事など、子どものために時間を使うことが多くて大変でした。小中学生になってからの忙しさは、乳幼児の頃の大変さとはまた違う感じでした。

―――お仕事はどういうものだったのですか?
省庁の外郭団体で、消費者向けの情報提供などの仕事をしていました。当初は週3日勤務(後に週4日)だったのもよかったです。

―――そのタイミングで再就職したことは、振り返ってどう思いますか?
心理学者の多胡輝さんの本を読んで「まず動く」というワードが印象に残ったんです。
一旦仕事から離れると、億劫になったり、踏み出すのに躊躇したりするので、準備ができてからやるんじゃなくて、とにかく最初に動くことが大事だ、みたいな話だったんです。私は元々慎重な方なので、自分に言い聞かせる意味でも、子どもは小さいけれどまずはやってみようと考えました。
早いに越したことはなかったと思うのですが、悪く言えば、全部中途半端だったのかなという思いはあります。仕事に集中してというわけでもなく、専業主婦のように家族のために何かすることもできず。でも、それぞれの生き方なので。
当時、専業主婦の方も多くて、専業主婦と仕事をしている人とが対立することもあったような時代だったけれど、対立するのは良くないと思っていました。お互いの価値観、やり方を認めないと。私としては、どっちつかずだったかもしれないけれど、それもひとつの選択肢だったし、そういう道もあっていいだろうと思います。

向いている仕事

50代:転職して現在の仕事を始める

―――その後、人生曲線が上昇に向かっていきますね?
ちょうど49歳の時に、今の職場に移ったんです。職場を変えようと思ったきっかけは、組織の方針が途中から変わっていって、なんか納得できなかったんです。
それで資格がらみでできるところを探していたら今の仕事の募集があり、ダメもとで応募したら採用されました。
あと、子どもが大きくなったこともあって、自分に振り向ける時間ができたからというのもありました。今の仕事の方が、勤務時間が長くなって大変なんですけど。でも、夫が40代後半で起業して家で仕事しているんです。夫はまめなので、自分のことは自分でやるし、私が外にいることが多いので、夕食を作ってくれていて、感謝しています。

―――だんな様が起業する時に不安はありませんでしたか?
不安は当然ありました。まだ下の子が高校生だったし、それに独断で決めて事後報告だったので、もめました。事前にもうちょっと説明してよっていう怒りみたいなものはありましたね。

―――職場が変わってからのお仕事はいかがですか?
消費生活に関する相談業務ですが、扱う範囲が広くて大変です。でも、様々な知識や情報が得られるのは楽しいし、興味の幅が広がりました。相談員ごとに主に担当する分野が分かれているのですが、担当に関連する資格も取りました。
それと、「消費生活相談員」という国家資格が新たにできて、上司からもなるべくとるように言われて、皆が一斉に受ける中で落ちるのも嫌だなーとは思ったんですが、受けました。取れたので良かったです。仕事しながら休みの日に勉強するのは大変でした。
仕事内容は、電話または来所で相談を受けて、助言や情報提供をしたり、企業との間に入って問題点を洗い出し、解決に向けてサポートするというものです。
中には、過剰な要求をしたり、攻撃的になる人もいるんです。矛先が相談員に向くこともあってストレスで疲弊してしまう、と友人に話したときに、「るり子さんは、寄り添って話を聞いてあげられるので向いていると思うよ」と言ってもらったことが救いでした。自分としては、向いていないのではと思っていたんです。あまりに理不尽なことを言われると平常心を保つのに苦労するので。
これも友人が言っていた言葉なんですが、「無駄な経験はないから、機会があればやった方がいい」って。それが印象に残っていて、それを転じて、どのような経験も受けとめ方によってプラスになると考えて、今でもそういう目で見るようにしています。仕事で大変なことがあっても、自分にはプラスになるかもと受けとめようって。

―――ストレス解消はどうしているんですか?
相談内容がどうしても金銭に絡むことが多いので、きれいなものを見たいとか、浄化されたいという気持ちになるんです。美術館に行って芸術にふれたいなとか、音楽を聴いて発散したいなとか、そういう欲求が強くなりましたね。同僚も美術や音楽が好きな人が多いです。

退職のタイミングを自分で考えなければ

―――これからについては何か考えていますか?
今の職場は定年がないんです。1年ごとの更新ではあるけれど。退職時期は自分で決める形になるので、タイミングをどうしようかと目下悩み中です。今、完全に辞めるのはちょっと早いかな。時代についていくために知識の更新が必要なので、歳とともに大変。体力的にも。
知らず知らずに衰えは来るので、自覚なく周りに迷惑をかけることもあると思うんです。今でも、相談内容をデータベースに入力するのに若いときより時間がかかることも。(衰えが)自覚できるうちに判断しなくては。先日退職された少し上の先輩が、「その判断ができるうちに辞めたいから」とおっしゃっていて、最後まで賢明な方だなと思いました。

―――今後のプランはありますか?
一つは、このままあと数年今の仕事をする。二つ目は、今辞めて、もう少し時間的に余裕があり、仕事内容もなんとかなりそうな仕事に変わる。今の年齢なら探せばあるかも。三つめは、きっぱり辞めて仕事から離れて、趣味とかボランティアとか別のことをやる。という感じです。

―――仕事をしていることの意味をどうとらえていますか?
やっぱり社会とつながっていたい。働いていなくてもつながれるだろうとは思うけれど、関われる広さは仕事を通してのものです。仕事を通じて人とつながり、情報も得られる。人と出会うことは大事にしたい。人は人によって磨かれるし、学べると思うんですね。

適応力を身に着けて

女性たちへのメッセージ

―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
今までだったら、とにかく正社員を辞めずにいるのがいいと思っていました。一度辞めてしまうと再就職しても非常勤だったり、待遇が違ったりするので。
でも、今は正社員だから安泰なわけではないし、これだけ社会が激変する中で、今までの価値観ではアドバイスできないというのが本音ですね。柔軟性、適応力、どんな環境になってもそのときに求められていることに適応できる力が、これからは一番大切になるのかな?
娘たちは正社員で、育休後も復帰しています。辞めるのはいつでもできるけれど、なるべく継続した方がいいよと言ってきましたけど、もうちょっと臨機応変にやっていく道もあるのかな、と思います。そのときに最適な選択肢を選べる能力、適応力を身に着けてほしい。
あとは長期的に見通せる力。5年後、10年後から逆算して、今、何をやるべきか考えるなど。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか?
流れるままに来たけれど、今回、やってきたことを振り返れて、これからを深く考えるきっかけになりました。まだ迷い中ですけど。

(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーズコメント

子どもは将来離れていくものなので、その時に社会とつながっていられるように将来を見通して行動したことや、専業主婦も働く人もそれぞれの生き方といったお話、現在の社会環境を冷静に見ているお話などから、バランス感覚のある方だと感じました。
肩に力が入らずに仕事を続けているようでもありますが、るり子さんにとって仕事はとても大事な意味合いを持つことが伝わってきました。
「人は人によって磨かれるし学べる」。これからもいろいろなものを学びに変えていかれるのだろうなと思いました。

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