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「アメリカンナイトメア」

 Netflixのドキュメンタリーで「アメリカンナイトメア」を観ました。これは副題の「誘拐事件はなぜ狂言と言われたのか?」の通り、2015年に北カリフォルニアの住宅地で、就寝中のカップルが何者かに襲われ、女性が拉致誘拐された事件の顛末を描いたものです。
 実話なのですが、その展開の不可解さ、複雑さ、俄かには信じられない警察や周囲の対応から、最終的には決着するものの、現実感から乖離した不可思議な事件で、事件の2ヶ月前に公開された映画「ゴーンガール」のリアル版としても当時アメリカ国内で注目を集めたとのことです。
 男性が警察に連絡して捜査が始まり、犯人からの身代金要求の連絡もありますが、まず男性が最初から狂言殺人の犯人扱いをされ、48時間後に女性が解放され供述すると、女性の発言も男性への報復(三角関係の恨みというこじつけ)のための狂言扱いされるのです。
 この二人は共に理学療法士の職場の同僚で、中産階級出身であり、郊外とはいえ犯罪の少ない穏やかな土地柄で、犯行の展開がややイレギュラー(薬物投与による男性の通報の遅れや女性が解放後距離の離れた自宅に届けられていること等)とは言え、十分に説得力のある供述をしており、弁護士もサポートしているのに、当初から警察にまったく信用されず、マスコミも警察よりの報道に終始しているのは不思議であり、不気味に感じました。
 ネタバレにはなりますが、類似事件の捜査(女性警察官の執念の捜査🟰同一犯の犯行)から、犯人が病的な性犯罪者であるハーバードロースクール出身の元弁護士(別件で資格剥奪)であること、就寝中の女性を襲って加害することを繰り返ししていること、本件も女性への加害自体が目的の下劣な事件であることがようやく判明します。(エリートらしい犯人の加害への拘りが事件を複雑で分かりにくいものにしていた。)
 展開についてもインパクトが強いのですが、このドキュメンタリーで一番感銘したのは女性被害者が、少女時代にも性被害に遭い、その時は告発出来なかったため、その犯人が同様の犯罪を繰り返したという経験を反省して、犯人に脅されながらも、被害状況を警察にすべて詳細に話したことと弁護士のアドバイスにより医療検査を実施したが発端(警察は信じないが...)になり、最終的に犯人逮捕に繋がり、真実が明らかになることです。
 その後二人は結婚して長女、次女が誕生するのですが、最後のシーンで彼女は言います「娘たちに自尊心を教えたい。」と。この「自尊心」という言葉は聞き慣れた言葉ですが、改めて深く感動しました。大袈裟ですが目から鱗の衝撃でした。
 彼女は続けます。「絶対他の誰かに自分を支配させてはいけない。」と。男性もそれを受けて「娘にはママのようになって欲しい。」「そうすれば大丈夫だから。」と語ります。
 これは性被害者だけでなく、すべての生きる人への貴重なメッセージだと思いました。
※警察関係者は誰も訴追されませんでしたが、民事的には賠償金支払いで和解したとのことです。

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