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アップデイトダンスNo.99「ワルツ」 アパラタス版

そもそも、わたしがこの作品を観たいと思ったきっかけは、山岸涼子先生の漫画作品『舞姫 テレプシコーラ』にあった。

バレリーナというか、コレオグラファーとなる少女の物語である。バレエやバレエ業界の知識はもちろん、漫画作品自体のストーリーももの哀しく、それでいて絵がとてもきれいで読みごたえがある。わたしはほぼリアルタイムでこれまで何度となくこの作品を読んできた。第2部では、高校生となった主人公が、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場する。コンクール開催期間中のレッスン審査の場面を中心にに物語が展開する。

2巻で主人公たちは、モーリス・ベジャールの『ボレロ』のインプロヴィゼーションをすることになる。主人公の篠原六花は、ボレロのリズムでありながらあえて曲を無視し、男女でワルツ(3拍子)を踊ることを思いつく(途中、彼女がコンクールクラシックバリエーションで踊る「ジェンツァーノの花祭」のパ・ド・ドゥが入る)。曲の最初から最後まで頭に残る「タン・タタタ・タン」というボレロのリズムを壊し、作品にある野性的な雰囲気とは逆に、思いっきり都会的でエレガントにしたかった、ということだそう。

このことがきっかけとなり、わたしは今回の公演を知った時、ワルツって六花ちゃんがボレロで踊ったものだ!となり、気になった。また、公演のチラシ等がコンテンポラリーダンスだからか、六花ちゃんのいうエレガントというものとはちょっと違うとも思った。だから、ますます気になった。


公演のチラシ(はがきサイズ版)


裏面

公演は面白かった。一音一音すべてを振付にしているように見えた。

とても忙しそうだった。

冒頭の勅使河原三郎さんの、皆既月食のような照明の中で踊るシーンは、まるでヨーロッパのミニシアター系の映画を見ているようだった。

それから、佐東利穂子さんとハビエル アラ サウコさんが登場し、一音も逃すまいという感じの、気迫と情熱あふれるダンスを次々と繰り広げていく。
年齢も性別も関係なく、皆すごい運動量だった。

様々な3拍子の曲に合わせた振り付けで統一されていたので、音楽とダンスの一体感は、わたしが今まで観たどのダンスよりも分かりやすかった。
音楽無しで観たらどうなるんだろうとも想像した。
それくらい3名のダンサーが音を演じていた。

途中、曲の音量が小さくなり、照明も暗くなり、まるで舞台裏やパーティーなどでいったん外に出て、混みいった話を始めるかのような場面があった。

また、2名のダンサーが寝ていて、何かの拍子でふっと(それも3拍子に合わせて)目覚めたりするシーンもあった。

皆既月食のような照明での静けさの中でダンスが始まることや、音に合わせて激しく踊ることや、舞台裏や睡眠から目覚めるかのような振付にそれぞれの一貫性やストーリーをわたしは見出すことができなかった。

公演後、勅使河原三郎氏は3拍子のワルツについて、「わたしたちの体にあるもの」というようなことをおっしゃっていた(うろ覚えですみません)。

3拍子は人生という文脈で常に私たちのなかに流れているものなのだろうか。

そのことを踏まえ、あえてこの作品にわたしなりのストーリーを結論付けるとすれば、この忙しい現代社会のなかで激しく動きまわり(踊り)、ときに安らぎや驚きがあること(照明の静けさなど)が人生であり、それらは三拍子に沿って揺れ動いていくという感じだろうか。

勅使河原氏はまた、3という数字にも言及しておられた。3は変化自在というようなことを。昔からある曲は3拍子が多いのだろうか??とくにヨーロッパでは?変化自在だから長く存在しうるのだろう。



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