英語

231010
数学が得意だったので理系学部に進む気はしていた。
得意科目で学部を決めるのはどうなのかと言われたこともあったけど、とは言っても苦手な科目を必要以上に延々と勉強し続けるのは私にとっては苦行だったし、得意な部分を活かせるならそれで良いんじゃないかと思った。
そうして入学した私だったが、苦労したのは英語だった。
当たり前や!という気持ちと、敢えて避ける方向で選んだはずなのになんでや!という2つの気持ちがせめぎ合っていた。
ただ、理系だから英語がいらないなんていう時代は、とっくに終わっていたのだ。資料を読むのも英語、書くのも英語、学会発表も英語。むしろ、大学レベルの教育機関に進むのであれば、英語は必須なのだ。
ただ、高校までの英語と違うのは、大学で使う英語はツールであるということだった。
高校までの英語は私の中では座学であり学問であった。授業を受け、知識を得る。定期的に試験を受けるのだが、正しい知識が身についていれば良い点が取れる。極端に言えば良い点を取るための学習努力をしていた。
大学に入ってからの英語は、あくまで私の知りたい知識を得るためのツールだ。英語の知識を得たい訳ではなく、そこに書いてある内容を知りたいのだ。
そこに気づいた時、英語に対する意識が変わった気がしたし、実際、英語を読むことへの苦行感が薄くなった。
初めての国際学会で質問がうまくできなかった時に「ゆっくりで良い。これは英語の試験じゃないんだから」と言ってくれたアメリカの先生。「お互いに話したい気持ちがあれば察しようとするから大丈夫。私だってちゃんと文法使えてるかわかんないわ」と笑ってくれたブラジルの先生。
皆さんのおかげで今の僕があります。本当にありがとう。

少し懐かしい気持ちになりながら、さっき指導教官から返ってきた論文の下書きに、もう一度目を通す。
何度見ても、全編にわたって綺麗な朱が乗っていた。
深呼吸しながら窓の外に目をやると、陽が沈んできている。
綺麗だな、とため息混じりに呟いた。

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