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在宅介護の未来

在宅で仕事をしていると介護事業所の様々な情報が入って来ますね。介護保険を使いたいのに、ケアマネジャーを探せないためにサービスが使えないという話しは良く聴こえてきます。地域包括支援センターの方も『要支援の方を居宅さんにお任せするのは最近は諦めてます。今は要介護の方も居宅さんが探せなくなっていて、今日は見つかるまでに25件も電話しました…』と、苦しい事情を聴かせていただいたこともあります。ケアマネジャーも高齢化が進んでいますし、数年後には目も当てられない状況になりそうですね。処遇が決して良いわけでもなく、資格取得や維持するための負担が強すぎる上に、社会が求める役割も肥大化しているので、すでに深刻な状況ではありますが、物事が好転する見込みはなく、さらなる状況悪化が加速しそうな気配ではあります。


さて、ケアマネジャーが探せないということで介護保険を使えない方が増えているという厳しい状況が生々しく地域から届いて来ますが、何とかケアマネジャーが探せたとしても、次には訪問介護が探せないという悲鳴が聴こえてきます。

ヘルパーさんの高齢化によって数年後に深刻な危機が訪れることは明らかですが、すでに状況は厳しいんですよね。『A事業所のヘルパーさんが退職するので、業務縮小することになったので別の訪問介護事業所を探しています。』という依頼が最近では本当に増えてきました。若手の採用が難しく、新陳代謝が図れないという状況も重なって、差し迫った危機が在宅に迫っているわけです。業務縮小と言えば自然災害や感染症のBCPでよく目にする言葉ですが、それが平常時において起きている事実は真摯に受け止める必要がありますね。


介護支援サポーターの実践は全国的に広がっていますね。地域に住む高齢者の役割や生き甲斐の充実による介護予防を目的としていますが、施設や事業所側から見ると、傾聴や掃除などの資格がなくてもできる仕事は地域の方々に担っていただいて、有資格者であるスタッフは身体介護に集中できる体制を整えることができるわけで、介護職の不足に対応する実践は施設を中心に広がっています。自分も施設勤務が長かったので、無資格の方々を採用して生活支援チームを組んでいただきました。シーツ交換や居室の清掃をはじめとして、施設生活に関わる援助をになっていただくわけですね。それによって生まれるゆとり時間をスタッフの教育時間に当てたりと、施設サービス全体の品質を向上させることに役立ちました。


例えば多くの施設では週に2回程度のシーツ交換を行なっていますが、大規模施設だと数名のスタッフが長い時間を拘束されます。冷静に施設全体の人員配置を眺めてみると、シーツ交換に人員が偏りすぎて、利用者の要望に即座に応じれなくなったり、見守りが不充分になることで、利用者側のストレスの温床になったり転倒事故が起きたりもするわけですね。何かを作業している最中にコールで呼ばれて中断すれば、介護職側のストレスが溜まるのも人間の性質ですし、対応面も荒くなります。そうなればクレームが出たり時には事故が起きたりして、苦情対応や事故対応という業務が生まれてさらに仕事を圧迫する負のスパライラルが加速するので、現場はとても殺伐とすることになります。つまり身体介護と生活支援を整理して、介護職が身体介護に集中できる体制を整備することは、介護職の不足に対応する環境改善としては急務で取り掛かるべき事項になります。


在宅介護の未来というテーマであるのに、施設の話しに横道がそれましたが、こうした施設状況と対策は、在宅においても有効なわけです。国の施策としては要支援を総合事業に変更して、人員基準の緩和等を行なっていますが、本質的にはそこじゃないよという思いがあります。重要なことは要支援と要介護を分離することではなく、両者を横断して身体介護と生活援助を区分を変更した新たな仕組みづくりにあるのだと思います。

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