#37 仕返しをする相手を間違えないで
「倍返し」のブームに乗るわけではないですが、あなたには、やり返したい相手がいますか?
新人時代の怖い先輩、理不尽な上司…。頭に誰かを思い浮かべた方も少なくないでしょう。
1.現場で起こっている悲惨な現象
当時は、辛くて悔しくて、「あんな人に絶対なるまい!!!」と毎日誓っていたはずなのに、気づいたら後輩たちから、同じように思われていた…ということありませんか。あなたがそうでなくても、周囲にひとりはいるのではないでしょうか。
新人時代に受けた教育や指導が、あなたの後輩への指導の基盤となります。ただ、基盤だからと言って、それが正しいく、相手にとって有効なことばかりではありません。あなた自身が体験して、その答えを知っています。
自分に否が応でも培われた基盤をどのように捉え、あなたの指導方法に活かすかは、他でもないあなた次第なのです。
先輩や上司には、言い返せないから、後輩にその分きつく接しようと考えている方、無意識にしている方は要注意です。自分がされたから、自分もするというのは、あなたを辛い目に合わせた先輩と同じ土俵にいる、ということを意味します。
自分がそうだったからとか、職場の風土がそうだからということが、後輩に同じことをしていい理由にはなりません。そんなんことをしていては、あなたの耐えた辛い経験が、意味のないものになってしまいます。
2.仕返しする相手は誰か
ⅰ.あなたが思う敵は本当に敵なのか
まず敵を知る前に、はっきりさせておきたいのは、「意地悪な指導」と、「愛のある厳しい指導」はまったくの別物ということです。
正当な理由や態度で指導していても、あなたがそれを受け止められず、ただただ「厳しいことをいうからイヤな人」と認識してはいませんか?
もしその理由で仕返しをしようとしているなら、仕返しは諦めましょう。あなたに仕返しはできません。なぜなら、仕事に対する姿勢や、指導に関する考え方が理解できていないからです。
どんな職種、職場であっても譲ってはいけないものはあります。そこを揺るがす行為をした後輩を諫めることは、先輩や上司の役目だからです。
そうではない場合にのみ、次へ読み進めてください。
ⅱ.仕返しすべき相手
あなたを辛い目に合わせた「特定の人」を、仮にAさんとしましょう。
あなたが相手にすべきは、その「Aさん」に他なりません!
Aさんは、先輩だったり、上司だったりするので、新人時代の関係性が根本に染み付いていて、なんだかんだ言っても、相手は上で自分は下と認識してしまっています。ですから、同じ方法で、仕返しする対象ではないと無意識に察知しているのです。
これは、至極当然のことです。同じことを彼らにしようとするのは、あまりにも無謀で、無意味です。いや、無意味というより、あなたの立場を危うくするという、かなりのマイナス、逆効果になってしまいます。
だからと言って、その矛先が後輩に向いてしまう方がかなり多いのは、とても残念なことです。
後輩に同じことをしていたら、Aさんの行為を正しいことだと擁護しているのと変わりません。そのことに気づき、自分の態度を振り返りましょう。
3.仕返しの方法
Aさんにとって、あなたを無視したり、蔑ろにしたりできない相手になりましょう。つまり、Aさんに、あなたという存在を、知らしめるのです。
やられたことと同じ土俵でやり返すより、自分自身を成長させて、Aさんが「文句を言えないあなた」になりましょう。
初めの頃は、できないことばかりで、自己嫌悪にも陥りやすく、Aさんの心ない言動の全てを受け止めて、傷ついてしまうでしょう。
その傷を癒すためにも、そんな状況から脱却するためにも、「相手に振り回されないあなた」になることが大切です。
ⅰ.一人前になること
まず、あなたが一人前になって、他のスタッフから、人柄や仕事に関して認めてもらえるようになりましょう。そうすることで、得られることは2つあります。
ひとつは、他の人があなたを認めているため、Aさんは、あなたをバカにしにくくなります。また、もしAさんがあなたの人格を否定していたら、Aさんの見解自体が間違っていたことを証明できます。
もうひとつは、あなたが自信を持てるということです。他のスタッフから信頼されているという自信、Aさんのあなたへの発言が誤りであるということを、あなた自身が立証しているという自信です。
一人前になるには時間がかかります。しかし、闇雲に一人前を目指すより、現時点での経験や実力の段階で求められていることや、自分もできることを探し、コツコツと継続していきましょう。確実に成長できますし、周囲のあなたへの信頼は少しずつですが、確実に増していきます。
ⅱ.仕事人として成長する
一通りのことがこなせるようになったら、それぞれの知識や、技術を深めていきましょう。また、あなたが日々の経験から学び考えて、導き出したあなたの「知恵」をどんどん増やましょう。
その知恵は、業務に関することだったり、コミュニケーションに関することだったりするでしょう。どれも、あなたが一番理解し、あなたが一番活用して実践できる、大切な知恵ばかりです。
知識・技術・知恵を融合させて、賢くAさんを打破していきましょう。ここで注意しないといけないことは、攻撃的にならないことです。攻撃的になると、Aさんのペースに飲み込まれてしまいます。
冷静に、仕事に関することで、相手の痛いところをつきましょう。
例えば、Aさんが知識・技術はすごいけど、コミュニケーション能力が低いとしましょう。Aさんがコミュニケーションをとらない(とれない)だろう相手と、あなたがうまくコミュニケーションをとり、得た有益な情報などをカンファレンスなどでアピールしましょう。
あなただからこそできることを増やしていくと、あなたの職場での存在感が大きくなってきます。そうすると、Aさんは、あなたを以前のように不躾に扱うことができなくなります。
ⅲ.人として成長する
指導者として、人として、Aさんと同じ道を辿らないと決意しましょう。
ⅲ−1.後輩に意地悪な指導をしない
よく、自分のされたことを引き合いに、いじめのような指導を正当化しようとする人がいます。あなたは、そんな風にならないでくださいね。
Aさんと敢えて違う道をいくことで、Aさんの行動が誤っていたことを立証し、他に有効な方法があることを、あなた自身が体現できるようになりましょう。
どんなに仕事ができる人であっても、自分がされたイヤな指導を同じように後輩にするのは、仕事についても、指導についても、何も考えていない証です。
なぜなら、どの仕事もひとりではできず、何かしらの形で協力する必要があるからです。誰かと協力するためには、相手にその仕事の目的や内容を理解してもらう必要があります。そのためには、どのようにアプローチをするのが有効かを考え、言葉や態度を選んで指導をする必要があります。
このことからも、立場の低い誰かを貶めて自分を上げる行為が、無意味で無教養で独りよがりであることがわかるはずです。
あなた自身がイヤな思いをした経験があるからこそ、相手に同じ思いを抱かせないためにはどう指導するか、と考えるきっかけにしましょう。
ただ、悲しくも起こってしまう問題として、指導者は自分にとって、とても有益だったから、相手にとってもそうだろうと思って、その相手に相応しくない方法で、指導してしまうことです。
ⅲ−2.人格否定はしない
上司・先輩・後輩など全ての人に対して人格否定するべきではありません。例え、あなたが過去にされたとしてもです。
何度もお伝えしていますが、同じことをしたら、あなたはAさんと同類になってしまいます。
職場で知っている”その人”は、ひとりの人のごく一部に過ぎません。ですから、仕事での落ち度ある行為について言及することと、その人そのものを否定することは全くの別物、ということを忘れないでください。
ⅲ−3.その経験を笑い話のネタにする
あなたの辛い経験を、面白おかしく後輩に語れるようになりましょう。私は、これが最大の仕返しだと思っています。なぜなら、笑い話にできるということは、あなたがその経験を克服したということだからです。
ここまできたらもう、Aさんに惑わされることはありません。あなたに気づきを与え、成長させてくれた人、というだけです。
イヤな経験の渦中にいると、相手の一挙手一投足が気になります。さらに、された言動を思い出し、苛立ったり、悲しんだり、恐怖を感じるなど、いろんな感情が絡み合って、常に脳裏に残ってしまい、考えたくないのに、考えてしまう状況が続きます。
そして、親しい人には愚痴として話すことはあっても、どうしても自分の中で悶々と抱え込んでしまうことが多くなります。
人に語れるということは、多少なりともあなたの中で、その事実を受け止められた部分があるということです。それは、仕事ができていない自分についてかもしれませんし、Aさんの言動を真に受ける価値のないことだという気づきかもしれません。
たとえ一部であったとしても、真実を知り、受け止めたことで、感情が整理され、経験という枠の中に余白が生まれます。その「余白を自分の言葉で彩ること=人に語ること」だと私は考えています。この余白が大きくなればなるほど、その経験をあなた色に染めることができます。
そこに至るまでにはいろんな葛藤があります。認めたくない自分と向き合ったり、思い出したくもないやり取りを何度も思い返して、意味を探ろうと試みたり、意味付けしたり…。
そうしているうちに、あなたは人として、困難な事態に対する考え方を習得したり、自分という人間を知ることができます。次に同じようなことがあったら、よりスムーズに対処できるようになったり、気になることを考え方ひとつで捉え方を変えられるようになります。
これって、人として、物凄い成長になるんですよね。
もし、その経験をネタにした話が、「こんなイヤな先輩」という内容だったら、あなたはその経験をまだ克服できていません。この場合、あなたは被害者で、Aさんは加害者と捉えていて、相手を落として自分を救い上げているだけの悪口や陰口です。
自分と向き合いましたか?あなたに非はないのですか?あなたがAさんからされたことからの気づきや考えの変化はないのですか?といった疑問がふつふつと湧いてきます。
もしあなたが既に、辛い状況を乗り越えた経験があって、それをネタに、人に話したことがあれば、そのとき、どんな風に話しているか思い出してください。
きっと、あなたの悪かった部分もあっけらかんと口にしてはいませんか?あなた自身と相手の長短を理解し、分析したからこそできる話には、尊大さも卑下もなく、嫌味の表現も見られないはずです。
そんな風に語れるようになりましょう。
まとめ
先輩などに辛い思いをさせられたから、そうなるまいと思っていたはずなのに、同じことを後輩にしている方もいます。
本来、仕返しをするのは、あなたを辛い目に合わせた本人です。ただ、当時の両者の関係性は大きく変わらないので、本人には仕返しをしにくい状態です。
仕返しの方法は、本人と同じ土俵ではないところ、方法で行いましょう。仕事上でも人間としても成長し、振り回されないあなたになりましょう。そうすることで、あなたの職場での存在感は大きくなり、その存在自体が相手の発した言葉、行った行為を否定することになります。
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