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#61 現職者を労わなければ辞める。辞めていくスタッフへ誠意がなければ、新しい人はこない

 施設規模が大きかったり、人気のある職場なら問題ありませんが、小規模な民間病院の場合、現職者はもちろん、辞めるスタッフに対して、ある程度の誠意を見せないと、スタッフの維持が難しく、新しい募集の妨げになってしまいます。

私の知っている現状

 以前私が勤めていた病院の看護師は、約2年周期でどっと人が入れ替わっていました。理由はいろいろありますが、その主要な原因は、方針に対してやっていけないとか、医師とのやりとりに嫌気がさしたり、業務の煩雑さ、看護師間の人間関係が問題です。
 看護師の人間関係はメンバーが変われば関係性も変わります。しかし、病院の方針はコロコロ変わるものでもありませんし、民間小規模病院では、医師、特に上層部の医師は、大きなきっかけがなければ変わりません。
 経営的なこともありますし、従業員の意見ばかり聞いているわけにもいきません。だた、ねぎらいの言葉だけでもスタッフの心象はいいですし、帰属意識を高めることにもつながります。

 せっかく、生活の大半を占める時間を過ごした職場を、ただただ嫌悪して辞めていくのは、そこで頑張った自分を否定するような気がして、悲しいなと思いながら、見送っていました。
 また、他の理由でやめたけれど、その後の職場とのやりとりで、嫌気がさすこともあります。不誠実な対応をされて、そこまで嫌じゃなかったけど、大っ嫌いになったという話も聞きました。

うまく辞めさせないと新たな募集で足を引っ張ることも

 看護師は転職を繰り返す、ジプシーが多いです。都市部なら特にその傾向は強いですし、特定の診療科だけを転職して回っている看護師も多くいます。ですから、新入職者が、以前同じ職場で働いていたとか、知り合いの知り合いが、自分の知り合いだった、ということはよくある話です。
 転職を考えるとき、転職サイトからの情報収集に加え、興味のある施設の現役スタッフや、元職員につてがあれば、そこから情報を得ようとするのは当然のことです。そうなると、嫌で職場を辞めた人は、ネガティブなことばかり伝えることになります。そうなると、よほどの魅力がない限り、その職場に就職しようとは思いません。

変えられるところを変えていく

 小規模の民間病院では、よほどの強みがない限り、人は集まりません。感染症の影響で、働き方についていろいろ考える医療関係者は増え、リスクの高い臨床を離れる決意をする人も多いです。そんな中でも働きたいと思わせるものは何かと考えると、その施設の医療的な特徴、労働条件、福利厚生の充実です。ただこれらは、環境的、経営的に変更しにくい部分でもあります。
 一方、人間関係の良さですが、メンバーにもよりますが、問題あるスタッフの処遇を考慮するとか、定期的な異動で雰囲気を変えたり、スタッフ同士が尊重しあう関係性を築くことで、変わる部分でもあるはずです。
 そういう関係ができていれば、辞めたスタッフも、「自分は理由があって辞めたけど、悪くないところだよ」と、いい口コミをしてくれます。

倫理的配慮、モチベーション維持のための行動を

 経営が傾くとどうしても、収益重視の方針に変わります。そうすると、そこで働いているスタッフは、経営的に仕方がないと自分を納得させつつ、本来とは異なる患者層や治療方針に、自身の倫理観や仕事に対する信念を多少なりとも曲げながら、働くことになります。その歪みを無視し続けると、どうしても頑張りの糸が切れてしまいます。
 経営陣や、各部門の責任者は、スタッフがそういう複雑な思いを抱えているということを知っている、そして、それでも働き続けていることの感謝は何かしらの方法で示した方がいいでしょう。
 新しいスタッフを入れるより、既存のスタッフを維持した方が、経営的にも現場的にも負担が少なくてすみます。
 「看護師は使い捨て」「辞めたら新しい人を雇えばいい」という考えは、昔ほどそぐわないということを経営陣に知ってほしいものです。

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