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現代のママ、情報を取り入れることの良し悪し

今日もこの本から。

この本の一節に昔のママと現在のママを比べる項目がある。

 昔のお母さんは年中暇なしで、ほんとうに気の毒なくらいでした。(中略)朝早くから夜おそくまで肉体労働の連続でした。しかし、当人はそれほど自己犠牲をはらったとは思っていなかったようです。(中略)精神的にはどこかのんびりしていました。心に余裕があれば、ストレスはたまらないし、子供のけんやかいたずらくらいには、びくともしませんでした。

『育児の原理』

この本の出版は1989年、ちょうど夫の生まれ年。ちなみに私はその3年後の92年生まれ。
著者の言う「昔のお母さん」とは、きっと著者自身の母親や祖母世代のことだろう。
だから、これから話す「現代のママ」が私の母親世代のことなんだろうと思う。

 では、現代のママは、といいますと、家事、育児は全般的に楽になったはずなのに、いつも疲れているような感じがします。(中略)世間とか社会の情報といったものがめまぐるしく飛びかい、それにふりまわされて、敏感になりすぎているのです。新しい知識は、先を争って吸収しなければ、世間にとり残されてしまうとばかりに、たえず緊張を強いられています。

『育児の原理』

この本が書かれた時点で「現代のママ」は神経質気味で、情報過多に悩んでいると作者は考える。
現在の私たちなんて、この「現代のママ」の数倍数十倍は情報過多なのではないかと思う。
自分が赤ちゃんの時にはインターネットは一般的でなかったし、スマホもこの世になかった。
携帯電話さえも一般的でなかっただろう。

それでも「現代のママ」はテレビやラジオといった媒体から、情報を取り入れやすくなった世代で、それが「現代のママ」を敏感にし、常に緊張を強いられていると書かれている。

今の私たちはどうだろう。
私は赤ちゃんを授かってから「赤ちゃん 必需品」「赤ちゃん あったら便利なもの」「赤ちゃん 寝かせ方」などなど、ありとあらゆる項目をGoogleで検索した。
気づけばInstagramのフィードもYouTubeのおすすめも赤ちゃんだらけ。
寝ても覚めてもインターネットが赤ちゃんのことについて情報を与えてくる。

便利だと思う一方で、情報過多による疲れは否めなく、まだ子が生まれてもいないのに不安になることが多かった。

例えば義母が「バシネット(ベッドサイドにくっつけて使える赤ちゃん用のベッド)を買ってあげるから、好きな物を決めてリンクを送ってね」と言ってきてくれた。
Amazonで「バシネット」と検索すると何十個も出てくる。
さっぱりどれが良いのかわからない。
次はGoogleで「赤ちゃん バシネット おすすめ」と調べてみる。
こちらもたくさんの検査結果が出てくる。
私は業者のウェブサイトだとその業者のバシネットを勧めるだろうから、と個人のブログなんかを目当てにスクロールする。
でも、果たしてバシネットを何個も買って比べる人なんているのだろうか?という疑問が湧く。
かなりバカバカしいことに思えるが、こういうことの連続だった。

あるバシネットは通気性の良い全面メッシュ。
あるバシネットは寝かせつけに便利らしい自動揺りかご機能つき。
あるバシネットは高さが何段階にも替えられてどんなベッドとも使える。

選択肢があればあるほど、私は「もう誰かこれを買え」とはっきり言ってくれ。
自分で考えたくない!と投げ出したくなった。

赤ちゃんの身の回りのものは安全性が高いこと以外には大切なことなどほとんど無いと思う。
ただネットで「うちの子はこれでよく寝てくれたから楽でした」なんて見ると、それを買わなくては、と思う。

前述した内藤先生の言葉にはっとさせられた。

”家貧しくして孝子出づ”ということわざもあります。赤ちゃんの環境をあまりにもりっぱな部屋、育児家具で満たしてやるより、お母さんが落ち着いて笑顔で接することのほうが大切なのです。

『育児の原理』

現代社会では子育てに限らずだが、いかに大切なものを見失うことが簡単か、考えさせられた。
例えば戦時中のお母さんは明日の食糧もままならない状態で、「さーて、どんなバシネットがいいでしょう?」なんて考える訳もなく、言ってしまえば現代の人々が欲しがる「シンプル・ライフ」だっただろう。

人は難しい環境に行き当たった時、それを悲観する人もいれば、クリエイティビティを発揮してこの環境で出来る最高のことは何だろうと考えられる人もいるだろう。
結局母となる私が赤ちゃんに与えられるものは、病気に立ち向かう免疫であり、愛であり、優しさくらいで、他の物は子が自分で何とかしていかないといけない。
だからこそ、私が出来る何より大切なことは、イライラしない、おおらかに赤ちゃんと接する、優しい気持ちで抱き上げる、そんな人間として大切なことくらいしかないのだと思う。

確かに便利グッズがあれば赤ちゃんとの生活がより楽になってイライラしないかもね、と思う自分もいるが、きっとどれだけ身の回りを整えても現代社会のイライラは絶えないと思う。
ありとあらゆる便利グッズを買いまくるより、ヨガでも瞑想でも、適度な運動でもした方が自分のためにも赤ちゃんのためにもなるのかもしれない。

産後の自分に言い聞かせるように今日のnoteをしたためている。

2024年2月20日

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