路上生活老人始めました

2023年5月11日午後

不安だった。恐れていた。頭痛が酷くなった。帰りたいと強く願った。受け入れて貰えないだろうと思った。哀しかった。辛かった。惨めだった。

激しい頭痛に襲われながら、俺の足は地元に戻るバス停を目指した。俺の心は迷っていた。バスが来た。俺の足はそのバスに乗る事を選んだ。

車内で俺の心は落ち着いていた。自分でも驚くほどだ。
車内が映画のワンシーンのように霞掛かっていた。良く考えると俺は白内障の初期だった。

地元が近づくにつれ、俺は自分の手が震えているのに気付いた。左手の指が右手の人差し指を小刻みに叩いていた。掌は汗で濡れていた。

バスを降りた。俺の足は自宅1km半径に近づくことを拒んだ。全身が震えていた。
公衆電話ボックスに入った。震える指で自宅の番号を押した。出てくれないかも知れない。冷たくあしらわれるかも知れない。全身が震え出した。全身が汗で塗れた。

俺は受け入れられた。

俺は酒が飲めない。受け付けないのだ。
飲むヨーグルトとコーヒー牛乳を立て続けに飲んだ。麦茶も飲んだ。喉の渇きは収まらなかった。

夕食は抜きだと考えていたが、カレーを食った。あまり味はしなかったが美味いと言わざるを得なかった。

夕食後風呂に入った。その前に体重を計った。いつもは夕食前に計るのだが今日は後だ。3kg減っていた。妻も2km減ったと言う。路上生活もダイエットには効果があるようだ。

丸一日薬を飲んでいなかった。頭痛薬も5ヶ月振りに飲んだ。その大きさに少し驚いた。

少しの時間ベッドに横になった。ほんの一日だけなのにこんなにも暖かい場所があるのだと思った。少し眠った。起きると頭痛はかなり治まっていた。

俺は喋るのは苦手だ。話をする時はいつも緊張してしまう。思った事の半分も伝えられない。だが書く時は違う。自分の抱えている想いをすべて吐き出す事が出来る。俺にとって書くという事はそういう事だ。それ以上でもそれ以下でもない。

老人は昔を懐かしむ。若者は未来を目指せ。
老人は彼らに従う。が俺は反発し反抗し抵抗する。足掻き藻掻き続ける。これまでもそうだった。これからも同じだ。


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