推しの子という欠落の話

 最近推しの子の話しかしていない気がする。まあいいか。推しの子は欠落の話である、歩いていてふとそう思った。
 主要な登場人物はどれも欠落を抱えている。それを確か心理学の言葉で基底欠損と言っていた。基底とはまさに人格の基礎、根の部分である。それが欠けているという状態、例えるのならグラスの底に穴が空いていて、どう頑張っても埋められない、そんな状態であろうか。それはひいては世の中に対する基本的信頼感のようなものを形成している。基底欠損は基本的に両親からの愛が得られなかったものがなりやすい傾向にある。
 ゴロー医師 両親が他界していたため、祖母に育てられる。
 さりな 両親に見捨てられたというトラウマ。
 アクア 母の殺害を止められなかったというトラウマ。
 ルビー 母親を投影する相手の喪失。父親を投影する相手の喪失。
 アイ 施設で育てられ、両親の保護を受けられなかった。
 有馬かな 子役時代の不遇の記憶。
 僕はそもそも満足している状態、足りている状態というのがよくわからない。というか、知らない。だから、彼らの痛々しいほどの苦しみに共振してしまう。共感するには手持ちの感情ではできないのだが。

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