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昔の話。大晦日。
じーちゃんちは西の方にあって、島は穏やかな海に囲まれていた。
私の家からは、新幹線と電車とバスを乗り継いで、8時間くらいかかった。
あんまり行けないから、大晦日の夜は、0時めがけて「あけましておめでとう」コールをする。東京や大阪に住む8人の孫が、誰がいちばんに電話がつながるか競争だった。紅白歌合戦が終わって、ゆく年くる年が始まると、そわそわした。
0時前でもいけない。
0時過ぎると通話中になる。
0時ぴったりにつながるように、10桁の電話番号を早く押す練習をした。
じーちゃんが電話に出ると「もーしもし。」ばーちゃんが電話に出ると「はいはい、あんたがいちばんじゃ。」
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返って来る返事は決まっていたが、いちばんに電話がつながった達成感でいっぱいになった。
中学生になった頃から、1番でなくてもいいや、と思うようになった。0時をだいぶ過ぎて、みんなが終わったかなと思う頃にかけるようになった。
もしかしたら、電話しなくなった孫もいたのかも知れない。だけど、ばーちゃんのがらがらした「元気か!」の声は、いつも嬉しそうだった。「じーちゃんは寝ちょるわー。」
島の家の黒電話と、大きいカレンダーの下に貼ってある電話番号の黄色くなったメモが、薄暗く光に照らされてる。
ぼやっとした印象が、目の奥に残ってる
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