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欲しい気持ちを、あたためる。

実家にある本をさがしに
電車を乗り継ぎ
人混みをかき分け
太陽を日傘で遮って
緑の風を浴びながら
ずんずん歩く
ただ、本だけのため。


誰もいないドアを開けた。

ひんやりした匂い
ここにあると思って開けた扉のなか
それは無かった。

 
過去の私が売ってしまったのか
あまり読まずに捨ててしまったか


昔買った本をもう一度
手にしたい時があるものだ。



今日の帰りはその本を手にして
ページめくりながら乗りたかったバス。
少し寂しくなって窓の外を見る。

他のじゃだめだった。
今日はそれを手にしたかった。


一軒目の本屋さん。
見当たらなくてさくらももこさんの
文庫本を立ち読み。

二軒目の本屋さん。
ならんだ原田マハさんの文庫本に
目がいく。

でもちがう。


ネットでぽちっとやれば
古本でもなんでも
すぐ手に入るから
手に入れたくてもなかなか入らない
こんな感覚が
久しぶりだった。 


今日はちょっとだけがまんして
欲しい気持ちをあたためる。


ふらっと入った珈琲屋さんの
はじめて飲むコーヒーが
すきっぱらに染み込んでゆく。

何度も香りを嗅いだ。



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