見出し画像

福祉行財政と福祉計画 福祉計画の目的について述べなさい。

 福祉計画の目的とは、福祉計画を策定するという行為、過程がもつ目的であり、それは福祉計画という手段が、どのような政策的な文脈のなかで、取り組まれるかによって異なることとなる。

 いま、市町村が策定する福祉計画を想定する場合、一方で、国の福祉政策との関連での策定目的が規定されている。法的に策定が義務化されている福祉計画では、その策定目的が明記されているのが普通である。例えば、障害福祉計画では、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の第88条に市町村計画の策定が義務づけられており、その目的は、障害福祉サービス、相談支援および地域生活支援事業の提供体制の整備と、自立支援給付および地域生活支援事業の円滑な実施の確保とされている。このように国の新たな福祉制度の導入において必要となる各種事業の円滑な実施手段として、福祉計画の策定が活用されるのである。

 言い換えれば、サービス資源の整備とその円滑な事業実施が計画策定を通じて、市町村自治体の福祉行政に期待されているということである。例えば、2005年(平成17年)の介護保険法の改正では、「地域支援事業」といった制度の拡大や「地域密着型サービス」などの新たなサービスが導入され、それを円滑に実施することを求めて計画の策定が進められることになる。国によってつくられる策定指針はそのためのものであり、策定マニュアルもそのための手引きとしての性格をもつ。市町村福祉計画の目的は、政策的な浸透において地域間において制度変更の漏れが出ないように、また可能な限り「制度基準による福祉サービスの確保」に格差が発生しないように計画によって補完しようとするものである。もちろん、都道府県はその計画的な推進を支援するための福祉計画を策定することになるが、こうした都道府県内の地域間の格差を是正する目的を強くもつことになる。

 他方では、今日の福祉行政は市町村主義がとられており、国の政策的な意図やルールに反しない限りにおいて一種の自由がある。

 地域によってニーズや課題が違うため、独自のサービスが行えるように計画しているが、地域間だけではなく、担当になる職員によっても捉え方が違う場合がある。行政職員は異動が頻繁にあるため、杓子定規的な人もいれば、熱意に溢れ取り組む人もいる。希望ではない部署の場合、勉強不足な人もいる。机上の空論と言われないために、何のため、誰のための福祉計画なのかをよく見直す必要がある。
 
(引用・参考文献)
(1)新・社会福祉士養成講座 福祉行財政と福祉計画
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?