[詩]2023.11.20

僕は地面を見、半月を見て、それから君の整へられた顔を見た。
眉の下にまなざしがあつた。
僕はその広さを前にどうしたらよいのだらう。
僕は言葉を発さなかつた。
君は少し笑つたが、僕は石のやうに固まつた両腕を下ろした。
君は寒さで震へてゐたが、僕は他にしやうがないから震へてゐた。
まう僕にできるのはからつぽの体を揺らすことだけだつた。

冬は僕の季節だつた。
夜だつたから自転車の灯りをつけた。
僕の前を照らしても僕は真つ暗なままだ。
僕は君から離れて一番星へ漕ぎださう。
君が僕の手で霜焼けをつくることがないやうに。


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