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おすすめ本紹介シリーズ

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約週1回ほどのペースで投稿しているおすすめ本紹介をまとめたものです。どれも他の人に読んでほしいお気に入りの作品なので、少しでも興味を持ってくれれば幸いです。
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2024年2月の記事一覧

噂の怪作はシン・近代文学⁈ ~零余子『夏目漱石ファンタジア』を読んで~

 長いようで短いライトノベル新人賞史の中でも受賞作発表時点でここまで話題になった作品は後にも先にも『夏目漱石ファンタジア』ぐらいな気がしてならない。なにせ大作映画を彷彿とさせる『シン・夏目漱石』に意識が向き、更にはもう色々とぶっとんでいるあらすじ。史実の人物に加えて時代も合わせた作品というのがラノベ自体ではメジャーなものではないのに加えて史実ベースでもエンタメ方面に舵を切った作風も近年稀に見ないような気がする。最近は史実に歩みを寄せる作品が多いというイメージが強かったから余計

ようこそ"本格的"ミステリの世界へ ~夜方 宵『探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。』を読んで~

 正直な話を、私はタイトルは短い方が好き派だ。だがその意見が本質からややズレていたということに気が付く機会があった。それが今回紹介する『探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。』(以下『すいほろ』)だった。実際に数えてみると句読点も含めてぴったり40字。背表紙のみっちり具合も他に追随を許さない。  普段ならそこまで気にならない文字数なのにどうしてこうも興味を持ってしまったのだろう? 振り返って考えるに全てを説明しない、一度その意味を読

絵空事かもしれない夢でも君となら ~瀬戸 みねこ『富嶽百景グラフィアトル』を読んで~

 まず初めに謝っておきます。今回いつもより若干テンション高いかもしれません。それもそのはず、まだ表紙も公開されていない年の暮れ。とあるWebサイトでたまたま『富嶽百景グラフィアトル』という本の存在を知ったのが全ての始まりだった。まずタイトルでラノベで浮世絵関係って珍しいなと惹かれ、次にあらすじを読んで「描いた絵で戦う? それもマンガじゃなくてラノベでやるの?」と興味を持った。結局少しも我慢できずに発売日当日に書店をハシゴして、読んでた途中の本が読み終わるや否や他の積読本を後回