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ひとり旅

片割れの人はどこにいるんだろう。
どこに住んでるんだろう。

「もしかしたら来月この神社に来てるかも知れない。」

「彼は辺りに住んでるのかな?」

なんで私はこんなことをしてるのかと思いながら、いてもたってもいられずに、もしかしたら会えるかもしれない、もう一度会いたいと見知らぬ土地を訪ねていった。

何しろコンタクトをとれないのだから仕方がない。メールを送っても返信はない。ラインを送っても電話をしても全くもって返事がない。
怒ってる。感情が波立ってるのをなんとなく感じる。

それでも日々の生活をこなしながら片割れという人を心に常に抱きつつ、いつか会えるという期待を胸に寂しく生きていた。

京都、名古屋、福岡、浜松、富士と我ながら旅だつ実行力にはびっくりする。

会えるかもしれないと思ったら、もう足がそこに向かっていた。

そうしてるうちに、思いがけない時に似ている人が電車にいる。心臓がバクバクものすごく高鳴って怖くなって、近づいちゃいけないという気持ちになり
「まさかあの人ではない。」と打ち消して、そこにいたのに声をかけられずにチャンスを逃した。

すごく会いたいのに「何かの力」によって引き離されていた。

声をかける人はみんな彼ではない人。バカじゃないかと思われるかもしれないが、姿かたちがまったく違うのに、「彼に違いない!」と思ってあとを追いかけてる私は、どう考えてもおかしい…。

突然に私の数歩先を、彼らしき人がいる。デパートのトイレまでその人を追いかけたこともある。全然違う人だった。


一人旅に出るごとに、私は誰かを追いかけるという、人生でしたことのない新しい行動を体験していた。

何度も何度も会えずにがっかり失望して帰ってくるその体験の中で、私には伺いしれない片割れの心の闇を知っていった。

会える日が本当にくるのだろうかと疑いながら、会える日がきっとくる!という希望がもたげる。

人を好きになるってこんなに大変なことなんだ。

1人ビジネスホテルにとまって夜空をみつめる。

だれもいない駅のホームで1人空をみつめる。

いろんな空を見ながら、私は私と対話していた。





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