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アナウンサーのある1日

「こんにちは。ここからは経済ニュースをお伝えします。」私はいつものようにスタジオでニュースを読んでいる。2000年代にBloombergTVという、通信社に近いIT企業で毎日マーケット情報を伝えていたことがあり、その経験から経済ニュースが中心になる。ふと原稿に目をやると・・・
私は目を疑った。”クイズ”と書いてあるのだ。
急いでマイクをオフにして、スタッフに(何これ?次のコーナー?)
と話しかけるがスタッフはそのまま読めという指示を出してきた。
私は意を決した。

「こ、ここで・・・クイズです。この動物はなんでしょうか。」
次にモニター画面を見た。
画面には鷹のような鳥が映っている。(どうぶつ?とりじゃない?)
次の原稿には「イーグル」と書いてある。
これはセリフとして私が言うべきものなのか?と考えながら、
口は「イーグルでしょうか」と言っていた。

次のページをめくる。答えが書いてあった。
スタッフはキューを出している。(キューというのは 話せ という指示)
私ははっきりこう発音していた。
「答えはシカです。」(え?・・・)

ここでパッと目が覚めた。夢だったのだ・・・
よくわからない夢が、朝の目覚めを最悪にしていた。

私は何か不安を抱えているのでしょうか
なぜこんな夢をみてしまったのでしょうか。
顔を洗いながらぼんやり夢の理由を考えていました。
確かに不安はありました。

あるクライアントのスピーチのレッスンを翌日に控えていましたが、
何を題材にするか悩んでいました。
一つ案としては口グセを取り上げてみてはどうかと思っていました。
クセというのは客観的に自分を見ないとなかなか気づけないものです。
貧乏ゆすりなどの行動を伴うものは指摘される可能性も高いですが、
話し方のクセとは人からあまり言われる機会がありません。
それは「正しい話し方」があるわけではないからです。
正しい形がないのに、第三者から言われるのは不快感を伴ないますし、
普通は気づいても見て見ぬふりをするものです。

私は様々なリーダーの映像を見ながら、
口グセなるものを抜粋していました。
「えー、あー」などの意味のない音を発する人は多いです。
間が持たないのでリズムを取るというか・・・そんなイメージです。
話を聞いていて何か違和感のあるものを探しました。
すると、強烈な癖を持つ人が私の前に現れました。

1.”あ、はじめてもよろしいでしょうか。なんだかバタバタしてしまいましたが時間ですので始めます。”

2.”これからお話するのはちょっとわかりにくいかもしれませんが、
きょうの趣旨に沿ったものですのでお話します。”

3.”これは以前にもお話したこともあるかもしれませんが、ちょっと大事な話なので今回テーマにあげることにしました。
説明が難しいようでしたら、その都度言ってください。

流して映像を見ていると一瞬なのでわかりにくいと思います。
この方、3つの文章のひとつひとつに「○○かもしれませんが・・・」と
仮定の言葉がついています。

「バタバタしてしまいましたが時間ですので・・・」
確かに前振りとして言いやすい言葉です。
2つめ「わかりにくいかもしれませんが」
わかりやすく話してほしいなと苦笑します。
3つめ「以前に話したかもしれない・・・」
はじめてではないなら、がっかりです。
さらに、もっと極端な話をしますと、
1,2、3すべて無くてもよい情報ではないでしょうか。

照れ隠しや間が持たない状態、あるいは沈黙に耐えれない時に
このようなついでの話をする人は結構います。
もちろん雑談だったり、ただの井戸端会議の時には構わないのですが、
敢えて話を聞きに来た人にとっては、
逆に時間の浪費になってしまいかねません。

気遣いのできる優しい人は、周りの事を考えるあまり
このような発言が出てしまう傾向があります。
いきなり話し始めるのは空気が温まっていないかもしれない。
まだ準備ができていないかもしれない。
言い訳をしておいた方がいいかもしれない。

このような思考はかえって逆効果です。
むしろ、人前に立つ人、リーダーは
オーディエンス(大衆)の前では自分本位で話してよいのです。
リーダー然とはそういうものではないでしょうか。
迷いがあっては言葉に出てしまいます。

本当のご自身の性格とは違うかもしれませんが、
マインドを変えることがポイントです。
それで形に近づくなら・・・
格好良いこともあります。

さて、私はなぜ冒頭の夢をみてしまったのか・・・
クライアントのことを考えすぎたのか。
マインドがへこんでいたのか。
因果関係は不明のままなのですが、
以前は原稿が漢文だった夢を見たこともありました。
それよりはいいですよね。

きょうの仕事はラジオでニュース。
不安に思うことは取り払って出かけよう。

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