母の病室に父が面会に来た。来てしまった。

父とはもう、10年くらいだろうか?会うことはなかった。それでも母と同居していることも、脳卒中で倒れて母に、迷惑かけていることも知っていた。
60歳を過ぎても、母に悪態をつく。母が癌の闘病中でも、尚、悪態をついていることも知っていた。

父と会わなくなって、というか縁を切ってから、私は結婚もしたし、子どもも産んだ。
でも、報告もしないし、会うこともなかった。

そんな父が、母の病室に来た。
私とは会話はしない。私からも話しかけない。

この2日間、ずっとずっと寝ていた母が、カッと目を開き
何しに来たの?
なんで?
もう、嫌だ!
もうなんなの?!
と声を荒げて取り乱した。

怒りを露わにしている母に向かって
昨日より良くなったな。
大丈夫か。
何か食べるか?食べたいものあるか?
と聞く父。

あぁ、この状況に酔っているな。
まもなく死を迎える妻を支える献身的な自分。
映画のワンシーンのような自分。

鼻を啜る音、涙を拭う素振りも、ちらっと見えた。

もう、嫌悪感すらなく、私はただただ傍観していた。

取り乱した母が、ようやく
もう、、、帰って!
と言うとニヤニヤしながら
そうか。帰っていいのか?帰るぞ。
と言って部屋から出ていった。

母が、少しでも穏やかに最期の時を迎えられたらいいのに。
と思っていると、

ねえ、もう、まあちゃん、助けて。
と母が言った。

いつだって、助けてるよ。私は。あなたを。
大好きだけど、大嫌い。毒親だけど、優しくて私を愛してくれているお母さん。


まず、父は面会禁止にしてもらおう。

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