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100本ノックの随想


若き日のウォーホル

コピー初仕事は、美容院の雑誌広告だった。
入社当時は、大手広告代理店へ丁稚奉公がメインだった私に、やっとライターらしき仕事が回ってきた。嬉しかったのは、一瞬だった。営業のスケジュールが詰まっていたため、優先的な業務を終わらせ、夜遅く書き殴る様に書いていたのを思い出す。チーフに見せると、全てくずかご行きだった。
「明日までに、100本提出して。」
え?と言う顔を見破られないように、ハイと持ち帰った。
100本は同じパターンじゃダメというのも理解していた。
当然徹夜したため、電車内でメイク(90年代当時は珍しい❣)し、寝癖をつけたまま、出勤。
100本ノックを、こわごわ返した。
チーフ「う~ん。まあ見せてくるよ。
ちなみに他のA君、Cちゃんにも声かけたから。」と、まぁ新人の私にムリだろ?と当然のように薄笑いをされた。

数日後、自らも駄作と思っていたコピーだったため、周りからも、最初だから仕方ないよと言われた。なのに私のコピーが採用された。皆が意外そうに驚きながら拍手をくれた。その広告が載った雑誌をこっそり本屋まで買いに行ったのを覚えている。経理の女子が笑いながら、会社に何冊もあるから持って帰る?と言われたがバカにされている気がして、陳腐なプライドのため購入したのだ。以後、新聞広告、パンの見出し等も関わることが出来た。
なぜか一度認められると、自分もやれる気がして、次々とこなしていた。

25年以上も昔の話である。
あの時、採用された私に向かって、言い放ったチーフの言葉が、今も心に焼き付いている。

~結局、俺等が必死にクリエイティブな発想で書いたところで、クライアントが気に入られなければ、ただのゴミ。要はクライアントのレベルに合わせないとダメなんだよな。〜
 つまり、私がたまたま採用されたのは、クライアントのレベルが私と変わらなかったということ。嫌味とも言えたが、本当の事だと感じた。
そして、それがいちばん難しいニーズに答えるということだと。

100本ノックは、多方面から考えたが、そういう意味でも、言葉のパズルを組み合わせて、さらに言葉をImageしていた。諦めたら負けということも教えられた。そんな90年代だった。

その後、市役所で勤務した時は、広報は、役所言葉に合わせないとNGだった。環境によってニーズが違うのは当たり前だが。

現在、庶務の仕事をしているが、上司への報告はほぼTeams。多忙な彼のニーズは結論優先だ。

現在はライターではない私が今思うこと。月並みなことなのであらためて言うことでもないが、

コピーとは言葉遊びではない。そして簡単なものではない。
しかし、伝え方はわかり易さと、響きが大前提だと思う。

A.I.は遠回りせずに、ストレートに伝え、クライアントの好みがインプットされ、今後も需要は増えると思う。
しかし、完璧じゃない言葉たちのかけらの中に、光のメッセージがあることを見つけられるのは人間しかできないのではと思う。




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